「世のちり洗う四万温泉」とご当地上毛かるたにも読まれている、群馬屈指の温泉地「四万温泉」。四万もの病気を治せるということからその名がつけられましたが、今回はその名前の由来ともなった日向見薬師堂をご紹介します。
風光明媚な大自然の中にひっそりと佇む日向見薬師堂
四万湖から車で10分ほど、四万温泉街からほど近い場所にある日向見薬師堂。風光明媚な大自然の中にひっそりと薬師堂が佇みます。
薬師堂の内部には薬師瑠璃光如来が祀られており、室町時代後期のものとされる建物は国宝(特別保護建築物)に指定され、さらに戦後には国の重要文化財にもなっています。
日本でも数少ない唐様建築となっており、風情がありつつも神聖さとどこか懐かしさも感じます。
全国に点在する薬師堂とは?
全国各地に薬師堂がありますが、皆さんは薬師堂やそこに祀られている薬師如来についてご存知でしょうか?
薬師堂とは、薬師如来像をご本尊として安置している仏堂のことを言います。薬師如来は、大乗仏教で病気平癒のご利益があると信仰されており、このような仏堂は日本各地に建てられています。仏堂が寺院の中心的な建物となる場合は、薬師堂という呼称ではなく、本堂、金堂、根本中堂などと呼ばれることもあります。
また、薬師如来を本尊とする寺院の寺号には、薬師寺、薬王寺、医王寺などのほか、東光寺、東明寺など「東」の文字を用いることも多いです。
日向見薬師堂の誕生秘話
西暦989年(永延3)、源頼朝の家来である碓氷貞光(うすいさだみつ)が、現在の新潟から峠を越えて来てこの日向見の地に宿泊した際に、川の音とともにお経を唱えていましたところ、1人の童子があらわれ貞光にこう告げたのです。
「あなたの真心こもったお経に感心したので、四万の病気を治す温泉を与えよう。私はこの山神である」
このお告げを受けて目を覚ますと、なんと!枕元に温泉が湧き出ていたのだそう。貞光はお堂を建て中に薬師如来像を祀ったとのことで、これが日向見温泉の誕生であり、日向見薬師堂建立の秘話となっています。
それ以降、この日向見温泉に病気を治すために訪れる人が薬師堂にもお参りに訪れるようになり、「湯前薬師」と呼ばれるようになったそうです。