おすすめの春の俳句をご紹介!

俳句は古くから日本人の心を癒し、愛されてきました。5・7・5の17文字からなる短い詩で、「季語」と呼ばれる季節にまつわる言葉を入れるという決まりがあり、春を表す季語が入ったものが「春の俳句」です。

中には季語のない「無季俳句」や、定型に縛られない「自由律俳句」というものもあります。今回はおすすめの春の俳句を、有名なものから、旅立ち、恋にまつわるものまでご紹介します。

情緒あふれる俳句の数々に触れ、春のおとずれを感じてみるのはいかがでしょうか。

おすすめの春の俳句《有名》

情緒溢れる春の俳句を集めました。短い言葉で表すおすすめの春の言葉をご紹介
(画像=pexels.com Folkより引用)

春の俳句からは、冬の終わりを告げる穏やかな日差しの中に咲く花の情景や、散りゆく儚い美しさを感じられます。17音の短い俳句の中には、一見簡単そうに見えても、細かな技術がたくさんつまっています。

また、一瞬で情景を想像させる巧みな言語表現が美しいです。俳句を詠む人によって、浮かぶ情景が少しずつ異なるのも面白いところ。有名な春の俳句を詠み、俳人たちの情緒あふれる世界観に浸ってみましょう。

心地よいリズム感と美しい比喩表現

散る桜 残る桜も 散る桜
良寛和尚 (りょうかんおしょう)

有名な良寛和尚のおすすめの俳句です。良寛は、名家の恵まれた家計に生まれながらも、自らの意思で僧侶となることを選びました。道元の思想に大きく影響を受け、子どもたちに教えを語って聞かせていたことも知られています。

この俳句には、いのちを桜の花に例え、「今どんなに美しく咲いている桜でも、いつかは必ず散ってしまう。そのことを心得ておくこと」というメッセージを感じられます。5・7・5のリズムが美しく、今をどう生きるかということを考えさせられる俳句ですね。

春の夜におすすめの一句

外にも出よ 触るるばかりに 春の月
中村汀女(なかむらていじょ)

俳人の中村汀女による代表作で、「触れられるほどの大きい月が見える。外に出てみてごらん」と呼びかけている、美しい情景が浮かびます。彼女は昭和期に活躍し、主に日常生活をテーマに、優れた表現力と感性で芸術性のある俳句を数多く残しています。

季語は「春の月」で、句末にもってくることで、体言止めを使って余韻を残しています。暖かな春の夜に、まるまるとした大きな月を、家族と幸せそうに眺める姿が想像できますね。生活の中における、ささやかな幸せを感じられる名作です。

目の前に浮かぶ春の情景

菜の花が しあはせさうに 黄色して
細見綾子(ほそみあやこ)

細見綾子によるおすすめの俳句です。季語は「菜の花」で暖かな春の日、鮮やかな黄色の菜の花が幸せそうに咲いている様子を詠んでいます。彼女は幼い頃に両親を亡くし、自身も病気を患っていました。

穏やかな春の日に、幸せの象徴といえる美しい黄色が目に飛び込んできた瞬間の、彼女の気持ちを感じ取ることができますね。苦しんでいる自分と、菜の花を比較して詠んでいるとも言われています。

視点の変化が面白い俳句

眼にあてて 海が透くなり 櫻貝
松本たかし

俳人の松本たかしによるおすすめの俳句で、砂浜に打ち上げられたピンク色の美しい桜貝と、それを透かして見えてくる海の光景が美しい一句です。

季語は「桜貝」で、「海が透けるような」と詠まないことで、俳句にスピード感とリズム感が生まれています。貝から漂う塩の香り、春を感じるピンク色から、このような素敵な俳句を思いついたのでしょうか。

彼は能楽師の家庭に生まれましたが、病弱であったため、俳人を志すようになりました。豊かな表現力で完成度が高く、読売文学賞も受賞しています。

春のおどずれと元気な子どもたち

雪とけて 村いっぱいの 子どもかな
小林一茶(こばやしいっさ)

有名な俳人、小林一茶によるおすすめの俳句です。長く寒い冬が終わり、暖かな春の日に外へ飛び出す元気な子どもたちの姿が目に浮かぶ、素敵な一句ですね。季語は「雪解け」で、「こんなにもたくさんの子どもたちがいたのか」と少し驚いている情景も浮かびます。

彼の俳句は「一茶調」と称され、親しみやすい表現が魅力的です。穏やかな心温まる俳句を数多く残しており、なんとその数は2万句以上にもわたります。

おすすめの春の俳句《旅立ち》

情緒溢れる春の俳句を集めました。短い言葉で表すおすすめの春の言葉をご紹介
(画像=pexels.com Folkより引用)

旅立つ時に感じるのは、ワクワクした高揚感でしょうか。それとも、まだ見ぬ世界へ飛び立つ、ちょっぴり不安な気持ちでしょうか。俳句には、当時の情景や感情を詠んだものが多く、言葉に秘められたそれぞれの思いを読み解くのも面白いですよね。

俳人たちは何を思い、この句を詠んだのだろう、と想像しながら自分なりの考察をするのも楽しいです。旅立ちの時、そして始まりの季節に詠みたい、おすすめの俳句を見ていきましょう。

ナチュラルで巧みな表現

梅が香に のつと日の出る 山路かな
松尾芭蕉(まつおばしょう)

日本を代表する有名な俳人、松尾芭蕉のおすすめの俳句です。季語は「梅」で、明け方に梅の香り漂う山道を歩いていると、梅の香りに誘われるように朝日が「のっと」登ってきた様子を詠んでいます。

この、「のっと」という言葉がポイント。彼が理念としていた、日常の出来事をさらりと表現する「軽み」を表現しようとする姿勢が見られる、言葉使いの巧みな俳句です。

旅に出ながら行く先々で俳句を詠んでいた松尾芭蕉。そんな彼に思いをはせ、旅立ちの春の日の朝に詠みたい一句ですね。

闘志をもって迎える始まりの季節

春風や 闘志いだきて 丘に立つ
高浜虚子(たかはまきょし)

俳人・小説家の高浜虚子の俳句で、春風を感じながら闘志をみなぎらせ、丘の上に立っている様子が感じられます。彼は有名な正岡子規の弟子であり、ともに俳句を学んでいた河東碧梧桐(かわひがしへきごとう)に俳句を委ね、ある時俳句の道から離れたことがありました。

しかし、碧梧桐が徐々に伝統的な俳句から離れていく状況を受け、「伝統的な俳句を守ろう」と立ち上がりました。その時に詠まれたのが、こちらの俳句です。挑戦したいことのため、旅に出ようと考えている方におすすめの俳句ですよ。

故郷への思いを感じる一句

春風や 堤(つつみ)長うして 家遠し
与謝蕪村(よさぶそん)

絵師・俳諧師(はいかいし)である与謝蕪村は、若いころに故郷を離れ、戻らなかったと言われています。こちらは、彼の故郷に対する思いが感じられる、哀愁漂う一句ですね。

季語は「春風」で、「春風の中、堤の上の道を歩き続けている。故郷の家は遠くに感じる」というメッセージが込められています。彼は当時、幼い頃に堤の上で遊んだことを思い出していたのだとか。慣れ親しんだ故郷を離れ、旅立つ時に詠みたいおすすめの俳句です。

旅立ちと生徒への思い

校塔に 鳩多き日や 卒業す
中村草田男(なかむらくさたお)

高浜虚子に師事していた俳人中村草田男の、おすすめの俳句です。「校塔」という言葉は、彼の造語であると言われていて、俳句は全体的に爽やかな白の情景が浮かびます。教師でもあった彼の、生徒たちの卒業に対する思いがつまった一句です。

彼の俳句は言語表現が巧みで、想像力を掻き立てる表現力豊かな俳句が多いのもおすすめのポイントです。言葉一つ一つから、力強さや生命力など、パワーを感じられますよ。

春の挨拶にもおすすめの俳句

初桜 折りしも今日は よき日なり
松尾芭蕉

松尾芭蕉による、春を感じられる爽やかな一句です。「今年初の桜が咲いている。良い出来事を祝福してくれているかのようだ」という、初春の美しい桜の情景が浮かぶ俳句ですね。

この句は彼が45歳の時、伊賀上野の薬師寺で催されていた、句会の初会合で詠んだそうです。送別会などのお知らせに一句添えるのも素敵ですよ。こんな素敵な句が添えられていたら「きっと良い日になりそうだ」と、心が弾みますね。