(※「所得」とは、所得控除を差し引く前の金額(収入―経費)のことです。課税所得ではありません)
この非課税限度額の計算式に、多くの市町村で採用されているのが、
35万円×(1+扶養人数)+32万円
です。(市区町村によって異なる場合があるので確認してください)
扶養控除と大きく違うところは、扶養人数に16歳未満の子ども含めていいということです。
例えば、子ども1人では、
35万円×(1+1)+32万円=所得102万円→年収約170万円まで非課税
子ども2人では、
35万円×(1+2)+32万円=所得137万円→年収約221万円まで非課税
子ども3人では、
35万円×(1+3)+32万円=所得172万円→年収約271万円まで非課税
※年収は目安です。非課税になる基準も自治体によって異なる場合がありますのでご確認ください。
この、非課税限度額を計算する際の「扶養人数」に、16歳未満の「年少扶養親族」を含めることができるというところがポイントです。
つまり、16歳未満の子どもは、所得税と住民税の「扶養控除」の人数には入りませんが、住民税の「非課税限度額」の人数には入れることができるのです。
この制度を使いたい場合、会社員の場合は、年末調整の「扶養控除等申告書」の一番下の欄「住民税に関する事項、16歳未満の扶養親族」の欄。
フリーランスや自営業などで確定申告をする場合は、第二表「住民税・事業税に関する事項」の欄に書きます。
子どもと扶養、所得税・住民税以外のチェックポイント
前述の通り、共働き夫婦にとって、16歳未満の子どもをどちらの扶養に入れるかは、所得税については関係ないことがわかりました。住民税は条件しだいです。
その他に確認しておいた方がよいことは、健康保険と、勤務先独自の扶養手当や制度についてです。
健康保険は、収入が多い方の扶養に入れると定めていることが多いようです。
勤務先独自の制度では、例えば、子どもの予防接種に対する補助など、さまざまな補助制度があることも多いです。そういったものが充実している方に入れることも検討する価値があります。
注意したいのは、勤務先の扶養手当の支払い条件として「健康保険の扶養に入っていること」となっていることも多いことです。子どもを夫婦どちらの扶養に入れたほうがお得か、勤務先の制度を調べておくとよいでしょう。
勤務先に、税金と健康保険の扶養を統一してほしいと言われた場合
ただ、勤務先の給与担当者に、子どもの扶養は、税金と健康保険が一致させてほしいと言われる場合があるかもしれません。
ちなみに、法的には一致する必要はありませんが、社内ルールでそうなっている場合は仕方ありませんね。
その際の、さらなる裏ワザとしては、確定申告をして妻の扶養にすることも、できなくはありません。
ただし、この裏ワザを使ってはいけないケースもあります。
- 16歳未満でも子どもが「障害者控除」の対象となるとき(所得税、住民税、ともに障害者控除が適用になるため、年収が多い方の扶養とした方が良い)
- 「保育料」の算定に影響がある場合(中には、夫側の扶養にしておいた方が保育料が少なくなる場合がある。一方、夫婦の住民税の合計で保育料が決まる場合は、住民税を少なくした方がいいため有効。市区町村の「保育料の計算の条件」をよくご確認ください)
- 児童手当は、扶養親族の人数によって所得制限額が変わるため、年収が高い人は、子どもを含めた方が有利な場合もある。限度額を見てシミュレーションしてください
健康保険への影響がないか、勤務先に確認が必要
このように、住民税だけ見ればお得なのですが、他の制度で影響が出る場合があるため、誰にでも簡単にオススメはできませんが、裏ワザ的なものとして知っておいてもいいでしょう。
子どもが16歳以上になった場合の扶養について
次は、16歳以上の子どもがいる家庭です。
この場合、所得税、住民税ともに「扶養控除」の対象になります。
ただし、扶養控除の対象となる親族は、先述の通り、生計を一にする親族でその年における合計所得金額が38万円以下である人をいいます。
所得税の扶養控除では、1人あたり38万円を所得から控除する事ができます。夫婦のうち、所得が高い(税率が高い)方の扶養に入れましょう。
もし、妻側の所得が「住民税の非課税限度額」以下であっても、夫側(所得が高い方)の扶養に入れた方が節税になります。
共働き夫婦、どちらの扶養に入れるべきか?まとめ
ここまでをまとめると、以下のようになります。
子どもが16歳未満
- 所得税…夫婦どちらの扶養に入れても変わらない
- 住民税…所得が低い方が「非課税限度額」以内であれば、低い方の扶養に入れた方がお得。ただし、健康保険や保育料など、他で影響が出ないか確認が必要。夫婦二人とも収入が「住民税の非課税限度額」以上なら、どちらに入れても税額は変わらない
- 健康保険…収入が多い方の扶養になることが多い
- その他…勤務先独自の扶養手当や制度を比較する 子どもが16歳以上
所得税、住民税ともに、年収が高い方の扶養に入れた方がおトク 書き方1つで節税になる というのも不思議な気もしますが、今年は見直してみてはいかがでしょうか。
また、税制は変わることもあるので、今後のニュースなどで取り上げられていたらチェックしておきましょう。
文・深川美幸(ファイナンシャルプランナー(CFP)/DAILY ANDS
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