「教養」とは一般に、幅広い知識を身に付け、心の豊かさや創造力、ものごとに対する理解力を深めることを意味します。社会で役に立つ実用的な知識・スキルではないため、ややもすると見過ごされがちですが、よりよく生きていくうえで教養を身に付けることはとても重要です。そこで今回は、大学卒業までに読んでおきたい4冊の教養書をご紹介します。

1.山形浩生『新教養主義宣言』

2.大学生のうちに読みたい!他人と差を付ける必読の教養書4選
(画像=『UpU』より引用)

著者:山形浩生
出版:晶文社/河出書房新社(河出文庫)
価格:単行本1,980円(税込)/文庫本836円(税込)

教養を身に付けることをよしとする考え方を「教養主義」と言います。かつて1970年代頃までは、大学では教養主義が重要なものとして捉えられていました。しかし時代の変遷とともに生き方も多様化し、高度経済成長期が終わる頃には教養主義は過去のものと認識されるようになっていました。

そんな時代の流れに真っ向から立ち向かうかのように「教養でもくらえ!」という扇情的なフレーズを帯に記した本書『新教養主義宣言』は、21世紀を生きるうえで知っておくべき文化や経済、情報社会などに関する教養を打ち出します。著者である山形浩生の巧みな文体とも相まって、まるで教養が洪水のように流れ出てくるかのようです。

大胆な提案に満ち満ちた本書は、1999年に刊行されたものの、いまだにアッと驚くような、そして思わず納得してしまうような内容です。

ちなみに10年後の2009年には『訳者解説 新教養主義宣言リターンズ』(出版:バジリコ、価格:1,760円税込)と題した同じ著者による姉妹編も刊行されているので、あわせてチェックしてみてはいかがでしょうか。

2.北村紗衣『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』

3.大学生のうちに読みたい!他人と差を付ける必読の教養書4選
(画像=『UpU』より引用)

著者:北村紗衣
出版:書肆侃侃房
価格:単行本1,681円(税込)/電子書籍1,400円(税込)

幅広い知識を身に付け、教養を深めるためには、さまざまな価値観が世の中に存在することを知らなければなりません。

例えば、フェミニズムという、女性の権利拡張を主張する考え方があります。フェミニズムは必ずしも一枚岩ではなく、なかには単に女性の地位向上を主張しているだけではなく、現代社会がいかに男性中心主義的につくられているかを暴き出す側面もあります。

シェイクスピアやフェミニスト批評を専門とする北村紗衣が著した『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』では、映画や演劇、小説など、一見すると何の問題もなさそうなさまざまな文化芸術を取り上げ、それらの作品がいかに男性中心主義的な見方に寄っているかをつまびらかにしていきます。

ちなみにタイトルはイギリスの童謡に出てくる「女の子って何でできてるの?お砂糖とスパイスとあらゆる素敵なもので」という一節がもとになっています。世の中がいかに男女別々で捉えられている部分が多いかを把握しておくと、キャンパスライフの見え方も変わるかもしれません。

3.森田真生『数学する身体』

4.大学生のうちに読みたい!他人と差を付ける必読の教養書4選
(画像=『UpU』より引用)

著者:森田真生
出版:新潮社
価格:単行本1,760円(税込)/文庫本572円(税込)/電子書籍512円(税込)

高校も大学も文系で、数学は大の苦手……という人もいるかもしれません。もちろん、ずっと理系で数学はお手の物だという人もいることでしょう。しかし『数学する身体』は、そのような文系と理系との区別をあらためて問い直すような刺激に満ちた書籍になっています。

著者の森田真生は、数学を「すでに分かっていることを、わかり直す」営みであると言います。例えば、私たちは“歩く理論”を理解する前から歩くことができますし、社会や環境について学ぶ前から特定の社会や環境のなかで生きてしまっています。

そのようにすでに体得していることについて、果たしてどのような仕組みによっているのかをあらためて理解することが数学なのです。そう考えると、数学は文系の人にとっても親しみが湧くものではないでしょうか。

また、理系の人でも数学を通して幅広い知識を身に付けるきっかけになるかもしれません。数学を通して人間について考えることも、心の豊かさにつながる教養のひとつだと言えるでしょう。