日本がギリシャのようにはならない理由

ただ、国の借金が膨大な金額であることに変わりはない。「そのうち日本もギリシャのような債務国になってしまう」といったことを言われるようになって久しくなった。しかし、日本の実情はギリシャとは全く違う。

日本の国の借金は、債権者の多く(国民)と債務者(政府)が同じ国内にいる。たとえて言うなら、家計を共にする者同士のお金の貸し借りのようなものだ。となると、むやみに金利を高く付けて取り立てるようなことはできない。実際、政府の借金が増えてもなお、日本国債の金利は低いまま推移している。

一方で、ギリシャの国債はどうだろうか。ギリシャ国債の多くは、国内では購入されていない。そこで、金利を高くして海外で売るしかないのだ。いざ国債の満期になった時どうやって返済するかと言えば、日本国債は円建てで買われているため、紙幣を増刷するなどして返す見込みはできる。しかし、国債の多くを海外で売るギリシャは、ドルなりユーロなりに替えて返済しなければいけない。そこが大きな違いだ。

さらに、日本の政府は、金融資産のほか、政府保有の土地や建物といった実質資産など、相当な資産を保有している。債務返済のために、現金化できる資産を売却済みのギリシャとは、そもそも単純に比較することはできない。

「国の借金は1062兆円、国民一人当たり837万円」とだけ聞けば、ここまで大きく膨らんだ借金をどうやって返せばいいのかといった気持ちになってしまう。ただ、誰から借りているかと思い出せば、それは単なる借金ではなく、国民の資産でもあるということがわかる。国の借金は同時に、国民や企業が金融機関の預金を通じて購入した、日本国債でもあるからだ。このように国の借金については、補足や前提の記述が不十分なゆえに、誤った情報として受け取りがちである。

とはいえ、それでも政府の負債が増大し、財政を圧迫している状況に変わりはない。むやみに危機感をあおられる必要はないが、それでも、増え続ける政府の借金をどうするべきなのかは、私たちが無関心でいられる問題ではないはずだ。国民は借金の債務者ではないにせよ、今後も「国の借金」には注視していきたい。

文・武藤 貴子(ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント)/ZUU online

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