睡眠は明日のパフォーマンスへの自己投資。多忙なスケジュールの中でも“睡眠”の質をいかに保てるかが、デキるビジネスパーソンの鍵といっても過言ではありません。今回は、自らが睡眠を改善することで15キログラムの減量と重度のパニック障害の克服に成功した“睡眠コンサルタント”友野なお氏に「質のいい睡眠に近づくためのテクニック」についてお話を伺いました。

2.眠りのスキルをアップ!専門家に“安眠テクニック”を聞いてみた
(画像=『UpU』より引用)

寝だめで疲労は回復しない

――さっそくですが、睡眠の質は何で決まるのでしょうか?

友野なお(以下、友野):一言で言えば、浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)のメリハリです。睡眠時間の中で“深い睡眠”と“浅い睡眠”が交互に出ていることで睡眠の質が決まります。

――睡眠計測アプリなどでは深い睡眠を計測するものが多いですが、全体の睡眠時間のうち、深い睡眠がどれくらいの割合になっていればいいのでしょうか?

友野:全体の睡眠のうち、深い睡眠が15%を占めていれば問題ないと言われています。深い睡眠は脳や体を回復させる大事な役割を担っていますが、とはいえ、深い睡眠だけが大事なわけではなく、浅い睡眠にも重要な役割があります。

――「平日は睡眠時間が取れないので、週末に“寝だめ”する」という人もいますが、寝だめは疲労回復に有効でしょうか?

友野:結論から言うと、寝だめで疲労は回復しません。むしろ逆に体内時計が狂ってしまって夜型になり、月曜日に寝不足状態に陥る危険性があります。気分が重くなったり、頭痛が起こったり……。いわゆる“社会的時差ボケ”や“ブルーマンデー症候群”のような症状が出てしまいかねません。

そもそも私たち人間の体は、寝だめができないメカニズムになっています。なので、日々の睡眠不足を解消するには、“質のいい睡眠”と“睡眠時間の確保”を地道に積み重ねていくことが一番です。

――“質のいい睡眠”をとるためのテクニックを教えてください。

友野:寝付きが悪い人にも試してほしい方法なのですが、朝起きたら窓際1メートル以内に立って、15秒間ほど太陽(屋外)の光を目に入れてください。そうすると、約14時間~16時間後に眠くなる予約のスイッチが脳の中で押されます。天候や季節に関係なく光量は十分に出ているため、毎日でも実行できるテクニックです。

良質な睡眠のために“光のメリハリ”は非常に重要です。「朝は明るい環境で起きて、夜は暗い環境で寝る」ことを心がけるだけでも、睡眠改善に大きくつながります。

寝具選びで“寝床内環境”を整える

――朝、寝起きが悪い人に推奨したいテクニックはありますか?

友野:寝起きに体や頭が痛かったり重かったりする人は、寝具を一度見直しましょう。寝具がへたって、本来の機能を失っている可能性があります。

マットレスや敷布団、掛け布団で囲まれた空間(寝具と体の間の空間)のことを“寝床内環境(しんしょうないかんきょう)”と呼び、温度は33度プラスマイナス1度、湿度は50%プラスマイナス5%がベストな環境と言われています。寝床内環境を整えることを意識して、寝具の状態を改めてチェックするのがよさそうですね。

――掛け布団にもさまざまな種類がありますが、何を選べばいいのでしょうか?

友野:まず、羽毛布団は1年中使用可能な万能選手です。冬は羽毛の量が多めのもの、夏は羽毛の量が少なめのものを使い分けるのがいいですよ。

――夏も羽毛布団ですか?

友野:夏は熱中症や寝汗対策のためにも、ひと晩中クーラーをつけて寝るほうがいいです。クーラーで冷え過ぎないように薄めの羽毛布団がいいんです。

――掛け布団を選ぶときは、どんなことに気を付ければいいのでしょうか?

友野:掛け布団を選ぶ基準は「軽い」「柔らかい」「ドレープ性がある(体のラインにフィットする)」の3つです。こういった羽毛布団は、体のラインに馴染んで、布団と体の隙間を埋めてくれます。隙間風などが入りにくくなり、寝床内環境の良好な状態が維持できます。

逆にドレープ性のない重い掛け布団だと、体のラインにフィットしない上に、布団の重みで体に負担がかかったり、寝返りを妨げてしまう恐れがあります。寝返りは、こもった熱を発散させたり、深い睡眠と浅い睡眠を切り替えたりする役割もあるので、とても重要なものなんです。

それと、寝具一式をそろえるのが難しい人は、就寝時に「寝るために作られた衣服」、いわゆるパジャマを着るだけでも睡眠改善につながります。上下セパレートのオーソドックスなものが最適で、通気性や保温性に優れたコットンや、肌触りのいいシルクなどの素材を選びましょう。

もこもこした素材や、ワンピースタイプなどの裾が長いものは寝返りを妨げてしまう恐れがあります。ほかにもネグリジェなど露出度の高いものは睡眠中の冷えにつながりますし、フード付きのものは枕との相性が悪く、首や肩が凝る原因になってしまいます。