「扶養家族がいると税金が安くなる」と聞いたことがありませんか?これは扶養控除という、税金などが安くなる制度が設けられているためです。ただ、少し制度がわかりにくく、実はあまりよく知らないという方も多いようです。

この記事では扶養控除について簡単に説明します。最近制度が変更になった点もありますので、すでに知っているという方も、一度おさらいという意味で参考にしてみてください。

そもそも扶養とは?

(写真=takayuki/Shutterstock.com)

そもそも「扶養」とはどういうことでしょうか?まず簡単にまとめてみましょう。

扶養とは?

ここで言う扶養とは、家族の生活費を支払っている場合、それに対する恩恵が受けられることをいいます。

家族の中には学生などのように収入が無い、あるいは低い方がいる場合がありますが、その方の生活費を支払っていることも多いと思います。そのような方の生活費を支払っていると、税制上や社会保険料の面で優遇される処置を受けることができるのです。

扶養の種類

扶養にはいくつか種類があります。税制上では「一般の扶養控除」や「配偶者控除」、「老人扶養控除」などです。また、それとは別に社会保険上の扶養もあります。

詳しくは次項の「扶養控除を受ける条件は?」でご説明します。

扶養控除を受ける条件は?

税制上の扶養控除の条件

扶養控除を受けるにはどういう条件があるのでしょうか?まずは税制上の扶養控除について、その種類とそれぞれの条件を下の表にまとめてみました。
 

控除額 扶養される方の条件 扶養する方の条件
一般の扶養親族控除 38万 16歳以上 ナシ
特定扶養親族控除 63万 19歳以上 23歳未満 ナシ
老人扶養親族控除 同居 48万 70歳以上 ナシ
非同居 58万 70歳以上 ナシ
配偶者控除 一般 13~38万 年収103万円以下 年収1220万円以下
老人 16~48万 70歳以上
年収103万円以下
年収1220万円以下
配偶者特別控除 1~38万 年収約201万円以下 年収1220万円以下

※すべてで「生計を一にする」が条件に。年収要件はすべて給与所得

注意したいのは、すべての扶養控除で扶養する方と扶養される方が「生計を一にする」必要があると言う点。生計を一にするとは同居しているというわけではなく、生活費を共有しているということです。

同居が条件では無いため、同居していない場合でも扶養控除を受けることができる可能性があります。

社会保険上の扶養控除の条件

次に社会保険の扶養控除についても見てみましょう。この扶養控除を受けると扶養される方の国民健康保険料と国民年金保険料の負担が無くなります。社会保険上の扶養控除を受ける条件は以下の通りです。
 

扶養される方の条件 扶養する方の条件
同居 一般 年収130万円以下
扶養する方の半分以下の年収
会社員
老人(60歳以上) 年収180万円以下
扶養する方の半分以下の年収
会社員
非同居 一般 年収130万円以下
年収が仕送り未満
会社員
老人(60歳以上) 年収180万円以下
年収が仕送り未満
会社員

※すべてで「生計を一にする」が条件に。年収要件はすべて給与所得

社会保険の扶養控除も、税制上の扶養控除と同様に生計を一にすることが条件です。また、社会保険上の扶養控除の場合は扶養する方が会社員であることが必要ですので注意してください。

「◯◯万円の壁」に注意!

(写真=liza54500/Shutterstock.com)

社会保険上の扶養控除の条件を見てみると扶養される方の年収条件が130万円とあり、これがいわゆる「130万円の壁」です。これまでは130万円の給与収入があっても社会保険上の扶養控除を受けることができました。

しかし、法が改正され、扶養を受ける方が給与を受ける勤め先の企業規模が一定以上の場合、106万円を超えると社会保険に加入しなくてはいけないようになりました。この場合は会社員の健康保険と厚生年金に加入することになります。

この保険料は給与の額面から天引きされてしまうため、手取り額としては減ってしまう要因となります。

厚生労働省 平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/2810tekiyoukakudai.html

社会保険に加入するのは損なこと?

社会保険に加入する義務が発生すると短期的には家計にマイナスとなります。しかし、扶養される方が老後に受け取れる年金はもっとも基礎的な国民基礎年金のみです。2018年は年間779300円が満額でした。長い老後を生きるには少し心もとない数字ではないでしょうか。

社会保険に加入すると国民基礎年金の2階部分である「厚生年金」に加入することになります。受け取り年金額は加入中の給与に応じますが、国民基礎年金よりは多くなります。

公的年金は終身年金で、亡くなるまでもらえるお金です。寿命が伸びている現在では非常にありがたいお金であると言えるでしょう。長期的な計画を立て、総合的に働き方を考えてみてください。

世帯ベースで考え、計画的な判断を

扶養控除について、税制上と社会保険上についてお伝えしてきました。扶養される方の年収要件や老人の年齢要件について、双方で若干違う点にご注意ください。

社会保険加入の是非は、老後の年金収入まで考えてあげると必ず損してしまうというわけではありません。将来のことも考えたうえで、扶養控除を受けるかどうか判断するようにしましょう。

文・若山卓也(ファイナンシャルプランナー)

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