「つみたてNISA」では、事前に金融庁に提示された条件に当てはまるファンドのみを購入できる。投資家が長期の積立投資に適したファンドを選びやすくしているのだが、それでも対象ファンド数は150を超えている(2018年10月31日時点)。数千もある投資信託の中から厳選されているのは確かだが、投資初心者や経験の浅い投資家は選択に悩むこともあるだろう。
どのような観点で「つみたてNISA」の対象ファンドを選べば良いのだろうか。ファンド選択の助けとなるよう、制度創設やその対象ファンドが選ばれる経緯に触れながら、対象ファンドの特徴やファンド選びの注意点を解説する。
一般NISAから見えた課題への対応
「つみたてNISA」の創設には、2014年に開始した通常のNISA(以下、「一般NISA」)では十分に資産形成を促すことができなかったという課題に取り組んできた背景がある。一般NISAの口座数は1,000万を超えており、十分に普及したとみることもできる。
しかし、NISAの口座開設はされたが一度も買い付けが行われていない非稼働口座が全体の50%以上もあった。また、一般NISAを利用して積立投資を行っている投資家は1割程度しかなかった。
さらに、投資家が数千円程度の少額から投資できることを知らないケースや、積立投資という仕組みを知らないケースも多く、一般NISAだけでは少額から積立投資できるということを周知させることができなかった。これらの課題を鑑みて創設に至ったのが、積立投資を政策面で後押しする「つみたてNISA」である。
つみたてNISAは恒久的な制度ではないが、投資期間は2037年まで20年間続く。また、非課税で保有できる期間も「最長20年」となり、一般NISAの「最長5年」に比べて大幅に長くなった。つみたてNISAは、一般NISAが投資を促進したことに加えて、長期・積立・分散投資を促進する制度と言える。
金融庁のお墨付きを得る条件
上述のとおり、つみたてNISAの対象ファンドは、長期の積立・分散投資に適したファンドに限られている。
金融庁がつみたてNISA対象ファンドを選ぶ条件は、非常に厳しい。まず、投資にかかるコストは、販売手数料が無料(ノーロード)であることが求められる。そして、投資信託を保有している間にかかる信託報酬(運用管理費用)にも上限が設けられた。
各種の指数に連動した値動きを目指す「インデックス・ファンド」の場合、国内資産のみに投資するものの運用管理費用は年0.5%以下、海外資産に投資するものは年0.75%以下と定められている。また、指数を上回る運用を目指す「アクティブ・ファンド」の場合、国内資産のみに投資するものは年1%以下、海外資産に投資するものは年1.5%以下と定められている
これらのコストは、ファンドの販売や運用を行う金融機関にとっては収益の源泉であるが、顧客の運用にとっては費用でありマイナス要素だ。運用管理費用に上限を設けることにより手数料が抑えられ、顧客の資産運用に過度な影響を及ぼさないようにしている。
どんなファンドが選ばれたのか―インデックス・ファンド
つみたてNISAの対象ファンドになるためには、インデックス・ファンドの場合、手数料条件に加え以下の条件を満たす必要がある。
- 信託期間が無制限または20年以上
- 毎月分配型の投資信託は除く
- 為替ヘッジの目的以外のデリバティブ取引による運用は行わない 現在142本のインデックス・ファンドが、つみたてNISAの対象ファンドとなっている。なおインデックス・ファンドの場合、この金融庁の条件に合わせて新たに新設されたファンドも多い。実際、つみたてNISAの条件に合うものとして、新たに組成されたファンドは79本もある。(2018年10月31日現在)