ここ数年、スペシャルティコーヒーを扱うコーヒーショップで、驚きの値段で取引されている「ゲイシャ」というコーヒーをご存知でしょうか?一杯2,000円なんてカフェも散見されるこのミステリアスな名前のコーヒーを、今回は掘り下げてみたいと思います。

ゲイシャ(Geisha)コーヒーとは一体なんなのか

ゲイシャとは、コーヒーの一品種であり、出自はエチオピアだと言われています。日本の芸者とはなんら関係ありません。

コーヒー始まりの地との説が有名なエチオピアには、未だにコーヒーの品種が特定されていない原生林が多く存在しています。その中で発見されたゲイシャ種は、病気に強いという理由で数カ国に輸出されて栽培がスタートしました。

当時はコーヒーの品質は味ではなく、豆のサイズや欠損の少なさによって各国が自由に判断していたため、病気に強くて生育しやすい品種が優先して植えられていたそうです。しかしゲイシャ種は、一本の木から収穫できる量が少ないこと、樹高が高くて栽培・収穫に手間がかかることなどから「育てにくい品種」と判断され、どこの農園でも他品種に植え替えされる事に。

しかし一部の農園では植えたままにされ、それが後に世界最高級品種と評される事になります。

南米パナマで起こったゲイシャ・ショック

ゲイシャがコーヒー界を驚かせたのは2004年、南米の小さなコーヒー生産国であるパナマのコーヒー国際品評会での出来事。後に「ゲイシャ・ショック」などと呼ばれる事件でした。

それは90年代後半よりアメリカが先導した「コーヒーは量より質」というスペシャルティコーヒーの価値観が世界中で受け入れられ始めた頃のこと。パナマの国際品評会「ベスト・オブ・パナマ」で、当時からスペシャルティコーヒーを生産していたエスメラルダ農園によって出品された豆が、90点を超える超高得点を叩き出して優勝したのでした。その正体が"あの"ゲイシャ種だったという事で世界中がびっくり。

なんでも植え替えがしにくい場所に植えっぱなしになっていたゲイシャをテイスティングしてみたら美味しかったため出品したそうなのですが、そのフレーバーは「フローラルの香り、ピーチ、柑橘、ベルモット、ティーライク、ロング・スウィートアフターテイスト……」などと言われる非常に複雑なもの。

パナマの品評会とは言え、世界中の審査員が集まるトップクラスの大会です。自然と世界中に名声が広がりました。1位になったそのロットはコーヒー史上最高値で落札され、しかもその後4年間にわたって優勝し続けたという衝撃のデビューでした。