老後の生活において、国民年金や厚生年金などの公的年金は収入の大きな柱になります。しかし、将来もらえる年金額は人によって大きな差があり、過去の納付状況によっては年金がまったくもらえない「無年金」になることもあります。今回は、現在日本でこの「無年金者」がどのぐらいいるのかと、どういう時に年金がもらえなくなるのか、そして年金をもらうために今からできる対策をご紹介します。
年金がゼロの無年金者は推定56万人?
はじめに、現在年金をもらっていない人がどのぐらいいるのかを見てみましょう。厚生労働省年金局が2018年に発表した「平成28年公的年金加入状況等調査・結果の概要」によると、65歳以上の公的年金非加入者のうち、公的年金受給者を除いた「その他の非加入者」は96万人となっています。
この「その他の非加入者」の中には、公的年金を受給できる年数を満たしていない人のほか、受給する権利はあるが、受給の繰下げをするのでまだ受給していない人も含まれます。したがって、年金がもらえない人の数を知るには、「その他の非加入者」から「繰上げ受給を待っている人数」を除く必要があります。
同じく厚生労働省年金局が2019年に発表した「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2016年に国民年金を受給している人の中で、繰下げ受給の割合は1.2%となっています。公的年金加入状況等調査に戻ると、公的年金加入・受給者の総数は3,353万6,000人なので、その1.2%である約40万人が繰下げ受給を待っていると考えられます。
したがって、まったく年金をもらえない無年金者は「その他の非加入者」96万人から年金の繰下げ受給を待っている40万人を引いた56万人程度と推測できます。
公的年金がもらえないのはどんな人?
公的年金から老齢年金を受け取るためには、保険料納付済期間と国民年金の保険料免除期間などを合算した資格期間が原則として10年以上必要になります。保険料納付済期間というのは、国民年金の保険料納付済期間のほか、会社員が加入する厚生年金保険などの加入期間も含みます。
この資格期間が10年に満たないと将来年金はもらえませんが、2017年7月以前は資格期間が25年必要でしたので、条件はかなりゆるくなっています。
今からできる対策は?
納付期限が過ぎても2年は納付できる
国民年金に加入するのは20歳以上60歳未満の期間です。つまり、60歳に近い年齢になっても受給資格期間が10年未満の人は、なんらかの対策をとって資格期間を10年以上にしなければ、将来の年金がゼロになります。
対策としてまず考えたいのが、保険料の納付です。国民年金の納付期限は、法令で「納付対象月の翌月末日」と決められていますが、この納付期限を超えても2年以内であれば納めることができます。
任意加入制度
60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たしていない場合、60歳以降でも70歳まで国民年金に任意加入することができます。ただし、申出のあった月からの加入となり、さかのぼって加入することはできません。
上で紹介した2年以内の納付と併せて、今から任意加入することで受給資格期間を満たせるのかどうか、検討してみてください。
老後に向けて今からでも対策を
公的年金から支給される老齢年金は、老後の生活の柱になるお金ですが、現在日本では無年金の人が約56万いると推計されます。年金をもらうには資格期間を満たす必要がありますが、2017年8月からは必要な受給資格期間が10年に短縮され、長い間保険料を払っていなかった人でも、今から保険料を払うことで将来年金をもらえる可能性が高くなりました。老齢年金は終身でもらえる数少ない年金の1つなので、自分の納付状況を確認し、確実に受給できるようにしておきましょう。
文・松岡紀史
肩書・ライツワードFP事務所代表/ファイナンシャルプランナー
筑波大学経営・政策科学研究科でファイナンスを学ぶ。20代の時1年間滞在したオーストラリアで、収入は少ないながら楽しく暮らす現地の人の生活に感銘を受け、日本にも同様の生活スタイルを広めたいという想いから、 帰国後AFPを取得しライツワードFP事務所を設立。家計改善と生活の質の両立を目指し、無理のない節約やお金のかからない趣味の提案などを行っている。
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