需給悪化は一時的、むしろ「買いチャンス」のケースも

そして、2018年2月14日、ついにダノンが保有するヤクルト株の売り出しが決定した。同社が保有するヤクルト株約3500万株のうち約2200万株の売り出しを発表したのだ。筆頭株主であることに変わりはないが、ヤクルト株の保有比率は約21%から約7%にまで縮小することになる。
 
売却はダノンからの提案だったようだ。ダノンは2016年に米有機食品メーカーを約1兆円で買収しており、その影響からバランスシートが悪化、リストラの必要性から今回の売却に踏み切ったと見られている。
 
2月14日の発表後、ヤクルトの株価は14日の引け値7740円から翌15日には7220円まで6.8%安と急落した。ヤクルトに限らず、今回のような大型ファイナンスによる需給悪化懸念から急落することは株式市場では珍しいことではない。ただ、これはあくまでも目先の需給悪化による一過性の現象であり、むしろ値決めや払い込みのタイミングが「買いチャンス」になるケースも多い。ヤクルトも例外ではなく、先週の大商いはそうした経験則に基づいた買いも一因となっていたのだろう。
 
そして、もう一つ。ヤクルトは需給悪化の対策として、発行済み株数の約3%、最大360億円の「自社株買い」も同時に発表していた。先週の大商いでは、同社の自社株買いも入っていた可能性も高そうだ。同社が取得した株は消却する予定だ。

日本から世界、新たな成長ステージへ

ともあれ、ダノンの売却で一時的な波乱に見舞われたヤクルト株であるが、今後はむしろ経営の自由度が高まる可能性もある。先週の大商いはヤクルトが「ダノンの片想い」から解放され真のグローバル企業としての成長期待も織り込まれているのだろう。
 
ちなみに、2017年3月期のヤクルトの業績をみると国内飲料・食品売上は2.6%増の2041億円。海外売上は7.6%減の1464億円だった。海外の不振は円高の影響もあったと考えられる。ただ、食品業界のご多分に漏れず、長期的にみると日本国内は人口減で成長は限定的とならざるをえない。そうなると新たな収益の源泉として、海外展開が極めて重要となる。
 
注目されるのは2018年3月期の業績で海外状況が改善していることだ。第3四半期までの国内の飲料・食品売上は1598億円と2.7%増ながら、海外は14.9%増の1286億円に転じているのだ。この調子でいくとあと数年で海外の売り上げが国内を上回るかもしれない。同じくセクター別の営業利益をみると飲料・食品では国内が139億円、海外は348億円で、海外の利益が国内の倍以上となっている。営業利益率も国内が8.7%なのに対し、海外は27.1%と高採算だ。
 
海外売上の約3分の2を占めているのがアジア・オセアニア向け。本数ベースで、主力の中国が22%増、インドネシアが5%増と好調だ。筆者が幼い頃に毎日飲んでいたヤクルトはいま、各国のヤクルトレディを通じてアジアの人たちにも広く浸透しているようだ。

文・ZUU online 編集部/ZUU online

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