主演の井之脇・金子の繊細な演技も素晴らしく、何度ももらい泣き! 彼らの平穏な毎日を願わずにはいられません。

◆バニラな毎日

夜ドラ『バニラな毎日』(NHK総合/原作:賀十つばさ氏による同名小説)も、しっとりと沁みる作品でした。夢だったこだわりの洋菓子店を開くも、経営に行き詰まり店を閉じたパティシエ・白井葵(蓮佛美沙子)と、図々しくて陽気な性格の料理研究家・佐渡谷真奈美(永作博美)。ふたりが“心に傷を抱えるカウンセリング患者のための”お菓子教室を始める物語です。

『バニラな毎日』
画像:NHK『バニラな毎日』公式サイトより
白井・佐渡谷の両名はもちろん、お菓子教室を訪れる患者さんたち一人ひとりの描写がとても丁寧。言葉で表すことが難しい心の機微を、繊細に表現していて観る者を惹きつけます。出ている俳優さんたち全員が、表現力豊かで素晴らしかったです。

なかでも人気ミュージシャン・秋山静(木戸大聖)が、白井と心を徐々に通わせていく描写には特に魅せられました。お互いが心に傷を抱えているからこそ、相手を傷つけてしまったり、相手のことを考えすぎてしまったり。そんなふたりを温かく見守る佐渡谷の笑顔もたまりません。失敗しても、挫けても、支え合って進もうと思える。そんな優しい勇気をくれる作品でした。

◆東京サラダボウル―国際捜査事件簿―

同じくNHKの『東京サラダボウル―国際捜査事件簿―』(NHK総合ほか/原作:黒丸氏による同名漫画)も名作。ミドリ髪の警察官・鴻田麻里(奈緒)×中国語通訳人・有木野了(松田龍平)が、在日外国人居住者に向き合う物語ですが、とにかく出演陣全員が実力派で、ぐいぐい引き込まれました。

『東京サラダボウル』
画像:NHK『東京サラダボウル』公式サイトより
日本人キャストだけでなく、さまざまな事情で追い詰められていく外国人役の方々の演技にも魅了されました。また、孤独な有木野の心を癒す最愛の人・織田を演じた中村蒼や、人身売買ビジネスを手掛ける組織の一味で“ボランティア”と呼ばれた怪しい人物を演じた絃瀬聡一。何より“ボランティア”と通じていた過去をもち、鴻田の相棒となったベテラン刑事・阿川を演じた三上博史のインパクトは凄まじかったです。