こうした努力の甲斐も虚しく、状況は好転しないまま。次第によしこさんは、信夫さんを避けるようになっていきました。

「私自身、夫の独りよがりな発言に耐え切れなくなってしまって……。自分だけが頑張る義務はあるのだろうかと、学んだりサポートしたりすることをやめました。本人を連れて行けないなら意味がないと思ったので、専門医への相談もしないままでした」

 夫婦間の溝は決定的なものとなってしまいました。離婚が頭によぎりつつも、経済的な事情を前に踏みとどまったそうです。

 そんな折に届いたのが、姪(めい)からの結婚式の招待状。昔からかわいがってきた姪の幸せな報告に、よしこさんの心は明るくなりました。

「姪は生まれつき心臓が悪く、何度も入退院を繰り返してきたので、結婚式での晴れ姿を見られるのは本当にうれしかったです。夫と参列することへの不安はありましたが、せっかく2人あわせて招待してくれたのに水をさすのもと思い、そろって出席することにしました」

◆姪の結婚式で“ありえない”発言をした夫

新郎新婦に声をかける男女
 日常的に姪とLINEで連絡を取り合っていたよしこさん。結婚式の前には「ウエディングドレスを着ると手術の痕が見えるから、周りの反応が気になるんだよね」という相談も受けていました。

「そのため、夫にも姪の病名を共有して『手術の傷痕のことは何も言っちゃダメだよ』と、念を押していたんです」

 そして迎えた、結婚式当日。親族での集合写真を撮るとき、姪は綺麗な純白のドレスで登場。立派に成長した姿を見て、よしこさんの目は潤みました。

 感動もつかの間、予期せぬ事態が訪れてしまいます。

 夫婦で祝福の言葉を伝えに新婦のもとへ行くと、信夫さんは姪に「病気のこと、妻から聞きました」と謎の報告をし、「そういう病気があっても結婚できるんだね」と言ってのけたのです。

 これによって、姪の表情は一変。泣きそうな顔になり、「そういう言い方は、傷つく人がいると思いますよ」と、信夫さんに震えた声で告げました。