受給開始年齢と繰上げ・繰下げの関係は、図表2のようになっています。
 
図表2

筆者作成
 
具体的な例を見てみると、例えば、繰上げにより62歳から受給を始めると、82歳で累計受給額は約4310万円となり、65歳から受給した場合の約4320万円より少なくなります。言い換えると、81歳までは得ですが、その後は、累計受給額は65歳受給より少なくなります(長く生きるほど損が出る)。
 
次に、繰下げにより68歳から受給を始めた場合は、79歳で累計受給額は約3610万円となり、65歳からの受給時の約3600万円より多くなります。つまり、78歳までは不利ですが、その後は年数が経過するほど累計受給額は増え有利になるといえます(長く生きるほど得)。
 

繰上げと繰下げの実態

では、繰上げ受給と繰下げ受給の実態はどうなっているのか、2022年の実績を見てみましょう。
 
基礎年金(旧国民年金を含む)の繰上げ受給:約159万人、25.7%、本来受給:約450万人、72.4%、繰下げ受給:約12万人、2.0%となっています。それに対して、厚生年金の繰上げ受給者は、2022年度約21万人、0.7%と少なくなっています(※)。
 
このことは、繰上げ受給は基礎年金(国民年金を含む)受給者が中心であり、厚生年金を含めた繰下げ受給は少ないことを示しています。
 

繰上げ・繰下げ受給の注意点

繰上げ受給をした場合の留意点として、一度繰上げ受給をすると元に戻すことができません。また、繰上げ受給の場合は厚生年金と基礎年金は同時に繰上げ受給になりますが、繰下げ受給の場合は別々に受給できるなどの規定があるので注意が必要です。
 
また、60歳代で繰上げ受給をした場合、再就職をした場合などでも、再度厚生年金や基礎年金に加入することができなくなります。また、繰上げや繰下げ受給によって、社会保険料・住民税が増減することや加給年金の受給にも関連がありますので、受給時期はよく考えて決めることが大切です。
 

終わりに