年金が「増えるなら」受け取り時期を遅らせてもいいかなと考えています。寿命を考えると「何歳から」受給がよいのでしょう?
年金の支給年齢は段階的に移行中で、現在、男性は65歳から受給できることになっています(女性は2027年に移行完了)。年金の受給は、この65歳を基点にして、支給年齢の繰上げと繰下げができるようになっています。繰上げの場合は年金の支給額が減額され、繰下げの場合は増額されます。   今回は、繰上げと繰下げによる年金の増減額をシミュレーションして、何歳から受給を開始すれば多く受給できるのかを見てみましょう。

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繰上げと繰下げ時の年金額の増減率

厚生年金と基礎年金は、所定の受給年齢(原則65歳)に到達する前の60歳から65歳になるまでの間、「繰上げ受給」ができますが、受給額は「繰上げ月×0.4%」が減額されることになります。減額率の幅は、繰上げた月数に応じて0.4~24%になります。
 
一方、65歳以降は「繰下げ受給」ができ(特別支給の老齢厚生年金をのぞく)、こちらは受給額が「繰下げ月数×0.7%」増額されます。繰下げ期間は、65歳から75歳までの期間で、増額率の幅は0.7~84%になります。
 
図表1は、厚生年金と基礎年金の合計額で年間240万円(月20万円)の受給予定者を想定して、繰上げ受給と繰下げ受給をした場合の90歳までの累計受給額をシミュレーションしたものです。
 
図表1

筆者が独自に作成
 
受給開始年は、60歳から70歳までの10年間を縦軸に設定しています。
 
60歳から受給の場合は、60ヶ月繰上げとなるため、増減率は「1-削減率(0.4%×60)=0.76」となります。66歳から受給の場合は、12ヶ月の繰下げなので、増減率は「1+増額率(0.7%×12)=1.084」のように表示してあります。
 
また、年間額は65歳の240万円を基準にして、繰上げ時と繰下げ時の年間受給額を表示しています。
 
横軸には、74歳から90歳時点での期間の累計受給額を表示しています。
 
例えば、60歳から繰上げ受給をした場合は、60~74歳までの累計受給額は約2740万円になります。70歳まで繰下げ受給をした場合は、70~74歳までの累計受給額は、約1700万円になります(図表1の単位は見やすくするため10万円単位となっています)。
 
そして、繰上げ受給については「この年齢以降は(65歳からの受給より)損をする」というライン、繰下げ受給については「この年齢以降は得をする」というラインにそれぞれ色をつけています。
 
これをもとに、何歳から受給するとよいのか、寿命との関係とともに考えていきます。
 

受給開始年齢別損得の分岐年齢