総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)家計の概要 65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計支出
ただ、この調査では対象者の大半が持ち家であり、住居費の消費支出に占める割合はわずか8.6%、金額は14万5430円×8.6%の計算で約1万2500円に過ぎません。そのため生活費の想定では、住居費1万2500円を家賃7万円に置き換える必要があります。
つまり、家賃と住居費の差である5万7500円分の生活費が増えることになります。つまり月々の生活費は15万7673円+5万7500円=21万5173円となり、年間だと約258万円です。
退職金以外に貯蓄はいくら必要か
ここまでの試算から、65歳で退職金800万円をもらい、働かずに年金だけで暮らしていく場合、貯蓄はいくら必要でしょうか。年金の受給額が約168万円なのに対し、生活費は約258万円かかるため、生活費の不足は年間90万円です。
つまり、貯蓄ゼロだと800万円の退職金は10年もちません。存命する期間を男性の平均寿命81歳、65歳からの16年間とすれば、16年×90万円-800万円の計算で、最低640万円の貯蓄は必要です。
さらに81歳から95歳まで14年間存命すると仮定すれば、14年×90万円の計算で1260万円も必要な貯蓄額が増えます。640万円と1260万円の合計は1900万円となり、2000万円近い貯蓄がないと暮らしていけません。
貯蓄不足を補う現実的な方法は?
2000万円の貯蓄が必要と言われても、50歳を過ぎる年齢で急に貯蓄を増やすのには限界があるでしょう。そこで、まず考えられる手法が、退職金と貯蓄を活用して年金の繰下げ受給を行うことです。
あくまで机上の計算に過ぎませんが、もし6年間年金を繰り下げると、6年×8.4%=50.4%も年金受給が増えます。受給額は168万円×1.504の計算で約253万円となり、受給開始後は年金でほぼ生活費を賄うことが可能です。
年金のないこの6年間にかかる生活費は258万円×6年=1548万円となり、退職金を除いた必要貯蓄額は748万円で済みます。もしもの備えも考えて、貯蓄額の想定を1000万円にしても、2000万円に比べれば半分です。
さらに住み替えが自由な賃貸の利点を活かし、家賃が安い物件に住み替えるのも効果的です。高齢になると新たな賃貸住宅への入居は多少ハードルが上がるかもしれませんが、月々の生活費が減れば、必要な貯蓄が少なくなり収支は大きく改善します。
いずれにしても貯蓄増、年金の繰下げ受給、生活費の削減など複数の対策を組み合わせることが大切です。もちろん、可能な範囲で少し長く働けば、一層老後の収支が改善することは言うまでもありません。