「仕方がないことかもしれませんし、それを嘆いてもしょうがない。でも、これからも僕はその時代を『想像してみよう』をテーマに二人芝居も漫才もやっていくつもりです。

あの当時の人たちは、自分たちとは感覚が違うところもあると思います。でも同じ人間ですし、そこにはきっと現代と同じように日常の笑いがあったはずなんです。だから『戦争時の日常』を笑いにしてもいいよな、と思うんですよ」

◆戦後まもなくとコロナ禍に見つけた共通点

――「同じ人間なんだ」と感じた、印象深いエピソードはありますか?

「戦後まもなくに行われた、盆踊りの話は心に残りました。混沌とした時期には『そんなのやってる場合じゃない』という風潮もあります。でも、『先人の魂が帰ってくるから』と開催した地域があったそうです。もちろん批判はあったようですが、祭り囃子を聞きつけた人たちがかけつけて、大勢で輪になって踊った。その瞬間は、辛いことも忘れることができたという話。

これって、コロナ禍と同じじゃないですか? エンタメって衣食住に関係がないから自粛ムードでしたけれど、結局は人がわいわい楽しむことは鋭気を養うことだと気づき始めた。戦争の時に気づいたはずのことが、数十年後は忘れ去られてしまっていた……」

アップダウン竹森巧さん_後編

――本当ですね。今度こそ忘れないようにしたい。

「エンタメは明日を乗り切るために必要なものだったんです。だから僕も、自分の活動に誇りをもってやろうと改めて思えました」

◆若い世代への「繋がりの大切さ」を伝えたい

――竹森さんが今後やっていきたいことをお聞かせください。

「やっぱり若い世代に伝えていきたいですね。世の中の関係性がどんどん希薄になっているように感じます。自分さえよければいい、という人が増えているような。

でも横のつながりの大切さや、お父さんお母さんだけでなく、さらに上の人たちが途絶えずに生んでくれたから自分がある……という気持ちを忘れないでいてほしい。そんな世代を超えて伝えるためのエンターテインメントをやっていきたいです」