「もう先輩がメインのテレビに出るのはええかなぁ」

 いつからか粗品はそう口にするようになり「俺なりの天下を目指す」と宣言した。

 相方のせいやがピンでゲスト出演を重ね、テレビスターとして順調に成長していく傍ら、粗品はYouTubeでの発言を先鋭化させ、まるで自らテレビの世界を遠ざけているように感じられた時期もあった。

 しかし昨年の『27時間テレビ』(フジテレビ系)で、突如粗品はテレビバラエティのド真ん中に回帰することになる。圧倒的な存在感を見せつけ、再びテレビは粗品を中心に動き出そうとする。ガタリ、と音を立てて時代が再起動した瞬間だった。

 しかし粗品は、殺到するオファーをことごとく断っていく。ゴールデンの大型特番、年末のネタ番組、それらの番組名を具体的に名指しし「賢いから断ったぁ~!」と切って捨てていく。

 そして狙いすましたように年明けの『ytv漫才新人賞』(読売テレビ)の審査員席に座り、また圧倒的な存在感を示して見せる。

 現在、各賞レースの審査員を務めるのは、正真正銘「ダウンタウン世代」の芸人たちだ。『R-1』ならバカリズムに野田クリスタル、『キングオブコント』(TBS系)に東京03の飯塚悟志、バイきんぐ・小峠英二、『M-1』ナイツ・塙宣之、誰もがダウンタウンと松本人志の影響を公言してきた芸人ばかりだ。

 そんな賞レースの“審査員界”にも、粗品は風穴をあけてしまった。こうなれば、世代交代は進むしかない。

 一時的にメインストリームから外れることで、回り道せずに再びメインストリームに舞い戻ってきた粗品、その肩には『M-1』『R-1』という2本のチャンピオンベルトがかかっており、その肩書きの説得力が粗品の存在感を後押しする。

 そして今の粗品の目には、もう先輩は映っていない。「粗品のロケ」に『ytv』のファイナリスト全員に続いて友田オレという後輩を呼んで、「粗品のロケの業界視聴率エグいで、関係者全員見てる」と言ってその背中を押す。