不死身の存在であるヴォルデモート卿を倒すには、彼が魂を分割して隠してる7つの「分霊箱」をすべて見つけて破壊しなくてはいけません。ハリー、ロン、ハーマイオニーは魔法学校を離れ、「分霊箱」を探す旅へ向かうところから『死の秘宝 PART1』は始まります。

 映画の冒頭、ハーマイオニーは両親が眠っている間に実家から出ていきます。普通の人間である両親に、自分がいたことを忘れさせる魔法の呪文を唱えて旅立ちます。部屋に飾ってあった家族写真から、幼いころからのハーマイオニーの姿だけが次々と消えていきます。昭和世代はTVアニメ『魔法使いサリー』の最終回を思い出し、ホロリとしてしまうシーンでしょう。

ハリーの身代わりとなって傷つく仲間たち

 これまではハリーたちの学園生活を描き、「クィディッチ」の対抗戦で盛り上がり、恋愛要素も盛り込み、明るく賑やかな青春ドラマでしたが、『死の秘宝 PART1』は死の匂いが濃厚に立ち込めています。ハリーたちが旅立つシーンから、ハリーが飼っていたフクロウのヘドウィグが絶命し、さらにはハリーを守ってきた「不死鳥の騎士団」のメンバーも倒れます。自分の身代わりとなって仲間たちが傷つくことに、ハリーは苦しみます。

 ハリー役を演じるダニエル・ラドクリフたちの成長ぶりをドキュメンタリーさながらに伝えてきた「ハリー・ポッター」シリーズですが、最終章となる『死の秘宝』は大人への通過儀礼として、仲間たちとのつらい別れが描かれています。

 純真な少年少女だったハリーたちですが、成長していくにつれて現実世界のダークサイドについても知るようになっていきます。ヴォルデモート卿に仕える従者・デスイーターたちと戦うためとはいえ、暴力としての魔法を使うようになります。

 また、「分霊箱」がなかなか見つからないことから、ハリーとロンはケンカ別れすることに。ハリーとハーマイオニーがいちゃついている妄想に、ロンは悩まされるのでした。能天気キャラのロンが塞ぎ込んでいると、物語全体のトーンが暗く沈んでしまいます。

リハーサル時に起きた取り返しのつかない悲劇