──ストレスというと?
毎熊 急に大勢の人に知られるってストレスを感じるんですよ。公開当時、毎日劇場に行って、直接お客さんと接するというやり方をやっていたんです。「良かったです」とうれしい言葉をいただくんですが、多少は演技をして「ありがとうございます」と言うじゃないですか。だから、すごく疲れたんですが、演技とは違う修行というか。人前にさらされ続けることの耐性がつきました。
言葉に頼らずに、映像の中での動きでどう見せていくかが映画には必要なこと
──過去に串田監督とは広告でお仕事したと仰っていましたが、どういう経緯で映画『初級演技レッスン』のオファーがあったのでしょうか。
毎熊 串田監督が初長編映画『写真の女』(20)を撮ったときに、コメントをいただけませんかという連絡があって。『写真の女』を観たら、こういう映画を撮るんだという驚きがあって、その緻密さに圧倒されたんですよね。コメントをお渡しして、「次の作品のときはぜひ呼んでください」とお伝えしたんです。それで今回、長編3作目の『初級演技レッスン』でお声がけいただきました。
──毎熊さんが演じるのは演技講師・蝶野ですが、別名の同一人物も演じています。役づくりで意識したことは?
毎熊 二役やるつもりで考えていました。蝶野がメインキャラクターとして出てきますが、よく分からない人物として存在している。とにかく謎で、何を考えているか分からないというところで、感情などは隠すことを意識し演じつつ、もう一人の澄島誠は“分かる”んですよね。人間らしさのあるキャラクターなので蝶野とは分けて考えていました。
──全編に渡って綿密な絵作りが圧倒的ですが、串田監督の演出はどのようなものなのでしょうか。
毎熊 どちらかというと僕ら俳優に対しては演技のことよりも、「こういうシーンになります」と説明してもらうことがほとんどでした。歩くコースにしても、串田監督とカメラマンのペアで綿密に考えていますが、どう歩くかまでの注文はなかったです。