単純に「商店街vsSC」という対立構造ではなく、商店街に降って湧いた「SC来襲」という災害に対して、それぞれの事情を抱えた市井の人たちが右往左往しながら、みんなが納得する道筋を探していくという話にもできるわけです。
そういう話なら、結パパがあちこち奔走してアーケード設置を取りまとめたことや阪神・淡路のときの避難所で仕分け隊長として八面六臂の活躍をしたことも伏線として機能するし、アーケードのときとの対比でナベの「心の復興」も表現できるじゃん。
パン屋だってそうです。SCが店内販売スペースを提供すると言い出すけど、パン屋は焼き立てにこだわってるから数も作れないし、商売の拡大より地域のコミュニティの中で慎ましく生きていくことを選択する、だって食べてみてよ、うちのパン、こんなにおいしいんやでと言ってサイキョーのおじさんに自家製パンを食わせて「確かに……う、うまい……」とかやらせればいいんです。そんで緑子に「この味は、小麦の味だけやないんよ。ここに暮らしてるみんなの思いが詰まった味なんよ」とでも言わせておけば、ほら「食」が地域を結んでいることも表現できる。
靴もそうだ。ナベがサイキョー担当者の革靴がすり減っていることに気付いて直してやるなんてことがあったら、こいつはこいつで自分の仕事に一生懸命なだけで決して商店街の敵ではないということも言えるし、どんな相手でも靴だけはちゃんとしたのを履いてほしいというナベの職人魂を描くこともできる。
なんぼでも、やりようはあるんです。そういう話を作れと言ってるんじゃないですよ。土地買収の話をやるなら想定マップを作れと言っている。それだけで説得力が違ってくるし、話も広がるでしょって、そういう話です。
だいたいナベが考えた「のど自慢大会with生バンド」が大成功してこの商店街に人が集まるようなら、サイキョーにとってますます魅力的な土地だということになってしまう。テレビのロケなんか来てごらんなさい。サイキョーは買収計画を加速させますよ。