65歳から受給する老齢厚生年金(報酬比例部分)の額は、下式で概算することができます(※8)。
老齢厚生年金額(報酬比例部分)≒平均年収×在職年数×5.481/1000
したがって、前述の312万円の老齢厚生年金(報酬比例部分)を受け取るためには、20歳から65歳までの45年間働いた場合、この間の平均年収が1265万円である必要があります。
同様に計算すると、時給1500円の会社員における、年金の一部が支給停止となる老齢厚生年金額と、その額が支給されるために必要な平均年収は、働き方と賞与の有無に応じて図表4のとおりとなります。
図表4
3. 時給1500円であれば、どんなに働いても年金は減らされない可能性が高い
したがって、時給1500円の方が、法定労働時間に加え時間外労働の上限まで働き、報酬月額の2ヶ月分の賞与を支給されたとしても、20歳から65歳までの45年間の平均年収が681万円を超えていなければ、在職老齢年金制度により年金が減ることはありません。
まとめ
老齢厚生年金を受給しながら厚生年金の被保険者として報酬を得ているとき、年金額と報酬の合計額が一定額を超えると、在職老齢年金制度により年金が減額される場合があります。
ただし、時給1500円の会社員が法で認められた時間内で働く場合は、一般的に老齢厚生年金(報酬比例部分)が減額される可能性は低いと考えられます。なお、在職老齢年金制度は、65歳前から受給する特別支給の老齢年金や、70歳を超えて働く会社員も対象となります。
出典
(※1)日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
(※2)日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金
(※3)厚生労働省 労働時間・休日
(※4)厚生労働省 時間外労働の上限規制
(※5)厚生労働省 割増賃金の基礎となる賃金とは?
(※6)日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和6年度版)
(※7)日本年金機構 厚生年金保険の保険料
(※8)日本年金機構 は行 報酬比例部分
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士