鎮目氏は、そうしたNHKの姿勢について、視聴者にとっての“メリット”と“デメリット”を挙げる。

「民放だったら、『知名度がない』とか『地味』といった理由で通らないような企画が通るのは、シンプルに羨ましいです。視聴者にとっても、知らない人のことを知ることができるというメリットはあるでしょう。

 ただ、そもそも制作時に視聴者の方を向いていないので、たまにがっかり感がある。たとえば『どうする家康』のときは、戦いのシーンで馬のCGがひどく、ネットでは“メリーゴーラウンドのよう”と笑われました。こうなると、視聴者としては“バカにしてるのか”といった感想になってしまい、受信料を払うのがデメリットになってしまう。民放に比べれば圧倒的に潤沢な制作資金があるはずですが、前述のとおりさまざまなしがらみもあり、お金の使いどころがおかしいんでしょうね。最新の放送技術を駆使して、民放が絶対真似できないような、『さすがNHK!』というものを見せてほしいなと思います」

 定番から脱却し、刺激と工夫を凝らさなくてはならない大河ドラマが背負うものは大きい。

(取材・文=木村之男)