数々の映画やドラマに出演している女優の松本穂香さん。大の映画好きでもあるという松本さんが史実を基にした感動作『愛を耕すひと』について語ります。

松本穂香
松本穂香さん
◆名優、マッツ・ミケルセンの最新作

『愛を耕すひと』
『愛を耕すひと』より(以下同)
 今回、わたしがご紹介させていただくのは、マッツ・ミケルセン主演映画『愛を耕すひと』です。

 舞台は18世紀のデンマーク。ひとり貧しく生きる退役軍人のルドヴィ・ケーレン大尉は、貴族の称号を条件に、荒地の開拓に名乗りをあげる。

 しかし、それを知った有力者フレデリック・デ・シンケルが自らの勢力が脅かされることを恐れ、ありとあらゆる手でケーレンの行く手を阻もうとする。過酷な状況に抗いながらも、彼が最後に見つけた希望とは……。

◆期待を超えてくる力強い存在感

『愛を耕すひと』
 マッツ・ミケルセンの主演作ということで惹かれたのですが、その期待を超えてくる力強い存在感でした。

 瞳と佇まいだけですべてを分からせてくる説得力。ケーレン大尉がなぜ荒地の開拓や、身分にこだわるのか、物語の中で特に説明されていないのにもかかわらず、マッツ・ミケルセンの瞳と眉間の皺だけで、ケーレン大尉のこれまでの人生を感じさせてくれました。

 彼を取り囲む女性陣も魅力的でした。フレデリック・デ・シンケルから逃げ出した使用人のアン・バーバラ、シンケルの婚約者、エレル、身寄りのない少女アンマイ・ムス。一人一人との出会いは印象的でありつつ、関係の深まり方に無理がなく、彼らの人生を緩やかに描いていくさまが優しくて好きでした。

◆自分の人生にとって必要なたった一つのこと

『愛を耕すひと』
 特にアマンダ・コリン演じるアン・バーバラの怒りの表現やその力強さが、どこかマッツと共通するものを感じさせて、2人が寄り添う画は不思議なパワーで溢れていました。

 ケーレンはひたむきに自分の人生と向き合ってきたように思えます。

 出会った人たちと関係を深め、愛し合い、時に反省し、出会いと別れを繰り返していくなかで、自分の人生にとって必要なたった一つを見い出すことができた。