一方で、日本ではYouTubeやネット広告がテレビの代替メディアといえるほどには成長していない。テレビ広告の縮小が必ずしもネットシフトを意味するわけではなく、広告主側はマーケティング戦略を再構築することになる。
「そもそも、広告収入を中心にしたテレビビジネスの終焉については、10年以上前から語られてきましたが、それに代わる大規模な広告出稿先は誕生しておらず、結局テレビ局や広告代理店などがテレビCMを『広告価値があるもの』として支えてきたんです」(メディア論を担当する大学教員)
求められるテレビ局によるテレビ離れ」
たしかにフジテレビ問題は、日本のテレビ業界が直面していた「広告依存の限界と、収益多角化への転換の必要性」を浮き彫りにした。これはある意味”転換のチャンス”となるかもしれない。
「フジテレビに限らず、多くのメディアグループ企業の収入は『放送・広告収入』だけでなく『不動産』や『コンテンツ制作』など多岐にわたります。『不動産事業』が収益の柱になっていて『テレビ局じゃなくて不動産屋だ』なんて揶揄もよく聞かれるようになりました。フジテレビに関しては、FMHが中核となるフジサンケイグループの収入を見ると、メディア事業や不動産に加えて観光事業や都市開発事業なども大きく利益を上げています」(同)
広告収入は、売上額としては依然として大きな柱ではあるが減少傾向で、その他の事業で営業利益を稼いでいる状況はかねてから指摘されてきた。
「テレビ制作は人件費も制作費もかかるので、売上規模は大きくても利益率は低く、しかも視聴率やこうした外部的な要因によって安定しないんです」(同)
地方局ではすでに、別事業の収入がメインになっているような局もある。メディア事業としてもテレビ広告に依存せず、別の収益源をどう確保するかという課題に向き合って、自社のもつIPを活用したり、ECサイトを強化したり、同地域でデータ連携をしたり、有名タレントや地元有名人を使ったオリジナル番組を制作して、制作のノウハウを積むなど、さまざまな動きを見せてもいる。
「総務省のほうで、テレビ局にお金を出してコンテンツをもっと世界へ売っていこう、という動きがあると聞きました。テレビ局には強力な制作能力や映像のアーカイブなどがありますし、AmazonのPrime VideoやNetflixなどでも日本のテレビ局と組んでドラマやアニメ、バラエティを作り、海外でヒットしているものもあります。Prime Videoの『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』は海外版『LOL:Last One Laughing』という名前でメキシコ、オーストラリア、イタリア、ドイツなどでローカライズされていることが話題になりました。韓国エンタメが世界的飛躍をみせた事例を考えれば、やり方次第ではあり得なくはない」(番組制作会社経営者)