電話口では特に要件を話さなかった伯母は、とにかくできるだけ早く会いたいと言ってきたそうです。智美さんは不自然だと思いながらも、その週末の土曜日に新宿のとある喫茶店で会う約束をしたそう。

◆喫茶店で相続放棄を迫られる

 約束の日、喫茶店で顔を合わせた伯母は、開口一番相続放棄について話し出します。話の意図がつかめない智美さんのことはお構いなく、カバンから取り出した一枚の用紙に押印を迫ったと言います。

喫茶店で相続放棄を迫られる
「え?って感じでしたよ。いきなり話し出すんですもん。あまりにも意味がわからなかったので理由を聞いたら、祖母が生前に借金をしているかもしれないから、もし何らかの負債があったらあなた達に迷惑がかかるので、相続放棄をしてほしいと言うんです。よくわからないし、もう関わりも持ちたくなかったからハンコを押しました」

 困ったような表情でそう語った智美さん。伯母は押印を確かめた後、ほとんど何も話さずにそそくさと帰っていったそうです。

◆法学部卒の弟に相談すると

 智美さんは法学部を卒業している弟に伯母とのやりとりを話すと「それはさ、おばさんがおばあちゃんの家を独り占めしたいだけだよ」と一言。確かに、亡き祖父も祖母も負債を作るような人ではなかったと振り返る智美さん。

「弟の言う通りだと思いましたよ。でも、いいんです。私達に迷惑がかからなければね。本当に大嫌いです! でも、もう一人のおばさんは母親とも仲がよくて、おばあちゃんの葬儀の時にLINE交換したんです。それだけでも行ってよかったと思ってます」

◆1年後に自己破産した伯母

 それから1年ほど経ったある日、姉が自己破産したともう一人の伯母から連絡が入ったそう。驚いたことに、祖母は生前証券会社の営業マンに上手く乗せられ先物取引に手を出していたらしく、後に負債が発覚したとのこと。実家を処分しても穴埋めはできなかったらしいのです。

「もう一人の伯母も実は姉から相続放棄を迫られていたらしく難を逃れたらしいんです。ほんと、どこまで自分勝手なんでしょうね。神様が罰を与えたんでしょうね…もう伯母とは一生会うことはないと思います。一つだけ言うなら、今回のことで少しだけ相続について学べたような気がします」