パナマ政府が不公平な利用料を米国に課している様子は見られないが、トランプ次期大統領は脅しの材料にした。

 パナマのムリノ大統領は「運河とその周辺の地域は、すべてパナマのものだ。通行料は気まぐれに設定されているわけではない。現実をねじ曲げる主張を強く拒否する」と厳しい調子でトランプ次期大統領を非難した。

グリーンランド購入意欲再び 対抗策で地元は独立急ぐ

 グリーンランドの購入についてトランプ次期大統領は、前回の政権時でも強い意欲を示していた。グリーンランドは世界最大の島。天然資源が豊富なうえ、米国とロシアの中間に位置し、地政学的にも重要ポイントだ。地球温暖化で北海航路の重要性が一段と高まっていることもあり、トランプ次期大統領は強い関心を示し続けている。米軍基地もあり、政庁所在地のヌークはコペンハーゲンよりもワシントンに近い。

 トランプ次期大統領は12月22日に「国家安全保障や世界の自由のために、米国はグリーンランドの所有権と管理が絶対に必要だと感じている」とソーシャルメディアに書き込んだ。

 これに対してグリーンランド自治政府のエーエデ首相は「我々は売り物ではない」と反発した。デンマーク政府もグリーンランド向けの防衛費の拡張を表明した。

 トランプ次期大統領はクリスマスの投稿で「国家安全保障の目的で米国に必要とされており、米国の存在を望んでいる」と記し、追い打ちをかけた。

 引き下がれないエーエデ首相は元日の新年のスピーチで、トランプ次期政権からの介入をかわすため、独立に向けた動きを強めることを表明した。1953年までデンマークの植民地だったグリーンランドは独立機運が年々高まっている。1979年に自治権を持ち、2008年には国民投票で独立の有無を決められるようになった。トランプ次期大統領の動き次第では、住民投票は2025年中にも実施される可能性がある。
血祭りにあげられた国と地域は、同盟国やこれまで米国と関係が近いところばかりだ。近い関係だろうと相手を脅して実を取るというやり方は、前回の政権時と同じで、新政権もあちらこちらに亀裂を生じさせながら、自我を押し通す道を歩みそうだ。
(文=言問通)