乃木は、テントの創設者でリーダーを務める日本人、ノゴーン・ベキ(役所広司)が幼い頃に死に別れたはずの実の父親・乃木卓(林遣都)であることを疑っていたが、その確信を得る。テントとの連絡用アプリに使われているサーバーのハッキングに成功した乃木たちは、別班司令の櫻井里美(キムラ緑子)の命で、黒須駿(松坂桃李)ら別班員6人で、ロシア国境付近を転々としているテントのアジト潜入を図る。テントと会合予定だったロシアの反政府武装組織「ヴォスタニア」のメンバーを襲い、彼らに成りすまして接触に成功した乃木は、ベキの息子である幹部ノコル(二宮和也)を人質にとる。別班がついにテントを攻略……と思いきや、乃木は別班員5人を銃撃。銃をノコルに手渡すと、「僕は敵ではありません。ノゴーン・ベキに会わせてください」「僕はノゴーン・ベキの息子です!」といい、別班の情報と引き換えにベキと会わせろと頼むのだった――。
乃木が別班を裏切るという衝撃の展開となった第7話。テントのアジトに潜入することは成功したが、牢に入れられる。黒須には否定していたが、裏切ったふりをしてテントに潜入するところまでが櫻井と乃木の”作戦”の可能性も十分ありえる。というより、テロリストのリーダーの実の息子である乃木を作戦のリーダーに据え、本当にただ乃木に裏切られただけとしたら“陰の諜報部隊”としてあまりに情けなさすぎるだろう。
乃木が別班であると気づき、マークしていた警視庁公安部の捜査員・野崎守(阿部寛)は乃木の後を追って銃撃現場までたどり着く。第7話では乃木と野崎が直接顔を合わせる場面は少なかったものの、2人のやりとりは今後の鍵になりそうだ。日本で療養するバルカの少女・ジャミーン(Nandin-Erdene Khongorzul)を見舞いに来た野崎が、バルカへ向かう乃木に、なぜ今回は偽名ではなく本名で出国予定なのかと訊くと、乃木は「そのほうが野崎さんが動きやすいと思いましてね」と返していた。別班であることがすでにバレているからこその不敵な発言とも見ることができるが、乃木が公安の野崎の力を実は頼っているのであれば、このメッセージは乃木から野崎への“協力要請”かもしれない。
バルカ空港に到着した際には、『ハリー・ポッター』シリーズが「超好きだ」という野崎にバルカでの要件を訊かれると、乃木は「スネイプ社と商談がある」と告げて去っている。スネイプは『ハリー・ポッター』の登場人物の名前で、“二重スパイ”という存在だ。さらに、スネイプが寮監をしている寮のカラーは「緑」で、本人は「魔術師」。「緑の魔術師」という意味であるノゴーン・ベキとつながる。この「スネイプ社と商談がある」も野崎へのメッセージであると考えられるだろう。ここで乃木が野崎に伝えようとしたことは2とおり推測できる。ひとつは、スネイプ社と商談がある=ベキと会う予定があることを伝えたとみられること。ベキ=乃木卓は元公安であり、バルカでの諜報活動のため農業施設団を装って入国したものの、何らかの理由で死亡したと偽装し、テントのリーダーとなった。いわば二重スパイ的な存在であり、そのことも野崎に伝えたということだ。もうひとつは、乃木自身が二重スパイであることを野崎に伝えた可能性だ。