マンハッタンのリトル・イタリーで育ったリンダ・ナポリターノは、イーストリバーにかかるブルックリンブリッジの近くにあるアパートに住んでいた。夫と子ども2人の4人暮らし。慎ましやかではあるものの、不自由のない生活を送っていた。

 リンダが主張するところでは、1989年11月30日午前3時ごろ、3人の宇宙人が現れ、ベッドで寝ていた自分の体を、ブルックリンブリッジの上空にあった宇宙船の中に連れて行った。

 宇宙人の体は灰色で、二足歩行をしており、青い光線を操ってリンダの体を宙に浮かせて12階にある部屋から運び出した。宇宙人は人間の身体の特徴を調査するかのようにリンダの体を調べ、その後、元の部屋に戻したという。

 リンダはこの体験を主張し始める数カ月前、ニューヨークのUFO研究家バド・ホプキンスに手紙を送っていた。13年前、保養地として知られるニューヨーク州キャッツキルで宇宙人に遭遇したという内容だった。

 当時、「宇宙人にさらわれた」との主張が各地で起きていた。リンダは、バドが主催する「宇宙人にさらわれた」と主張する「拉致被害者」グループの集会にも参加していた。

 1989年4月には、キャッツキルでの宇宙人との遭遇後に、自分の鼻の中に異物があることを見つけたとバドに話した。

 バドは宇宙人がリンダの鼻に何かを埋め込んだと考え、宇宙人による人類の拉致行為の証拠だと主張した。

 しかし、検証のため医師らが摘出しようとした直前に、リンダの鼻から異物は消えていた。

 拉致体験の後、リンダがその体験をバドに話すと、バドは本腰を入れて調査を始め、目撃者を探すため、ニューヨークのダウンタウンを駆け回った。

 1996年、バドはリンダの拉致体験をまとめた『Witnessed: The True story of the Brooklyn Bridge abduction(目撃者:ブルックリン拉致事件の真実)』を出版した。書店でサイン会が行われるほどの売れ行きとなった。