ときに抗しがたい出来事に向き合い、他者の存在やつながりを感じ取るなかで生み出されてきたその作品は、小さくささやかな存在や名状しがたい兆しに光を当て、人間の感受性を呼び覚ます。
過去最大規模の個展
「近藤亜樹:我が身をさいて、みた世界は」展は、近藤氏の2022年以降の作品と、今展に向けて制作された50点を越える新作を一挙に展示する、作家にとって過去最大規模の個展となっている。
展示では、生への肯定や他者と共に在ること、人間的な尺度を越えた自然の世界、植物とのささやかな交感、芸術の根源に対する問いなどをテーマに、絵画表現の可能性を切り開く近藤氏の現在を、建築家・青木淳氏による展示構成によって展覧。
生命の祝福、他者と共に在ること、2022年以降ますます切実さを帯びる災害や戦禍にある人々への想い、葛藤とレジリエンスなど、近藤氏の作品をとおして「生きること」と「描くこと」が切り開く世界に迫る。
サボテンをモチーフにした新作や巨大壁画
注目したいのは、近藤氏が注力するサボテンをモチーフにした新作シリーズ。
ユニークなかたちや特徴をもつ、近藤氏の大小の「サボテン」は、生命力のシェルターとも、あるいは自己・他者を慈しむ気持ち(コンパッション)の象徴とも見ることができそう。