では、103万円の壁が引き上げられた場合、次の条件で手取り額の変化を見てみましょう。
 

・夫の年収:600万円
・妻の年収:100万円から150万円に増加
・息子(20歳・大学生)の年収:100万円から150万円に増加

 

所得税・住民税はどうなる?

妻や息子の収入が100万円から150万円に増えても、これまで通り夫の税法上の扶養に入れることになります。つまり妻と息子は、引き続き所得税と住民税が発生しません。
 
また、夫も引き続き配偶者控除や特定扶養控除を受けられる可能性が高く、壁が引き上げられた分、自身の給与から差し引ける基礎控除等も増額しているため、所得税や住民税は減額となるでしょう。大和総研の試算によると、年収600万円の人なら約7万円の減税になるとしています。
 

社会保険料の加入が必要になる

所得税や住民税が減税となる一方で、妻の収入が増加し一定の条件を満たすと、社会保険へ加入することになります。社会保険の扶養を外れて、妻自身が加入する条件は次の通りです。
 

・週の所定労働時間が20時間以上
・給与が月額8万8000円以上
・雇用期間が2ヶ月を超える予定
・51人以上の従業員がいる企業に勤務
・学生でないこと

 
2024年度の東京都全国健康保険協会の例を見ると、年収150万円の場合の社会保険料負担は年間約22万5000円です。そのため、妻の実際の手取りは約130万円になる可能性が高いでしょう。なお、息子は学生のため社会保険加入の条件に当てはまりません。
 

家計全体での手取り額は増える

妻の収入が増加して社会保険料の負担が発生したとしても、家計全体の収入が増えることで、家計の手取り額が増加する可能性が高いでしょう。
 
例えば、妻の収入が100万円から150万円に増加した場合、50万円の収入増です。この増加分から社会保険料を差し引いても、家計の手取りで考えると約30万円増えることになります。また、夫の所得税や住民税が約7万円減税になり、息子は得た収入がそのまま手取りとして受け取れます。
 
103万円の壁が引き上げられても、年収106万円(月額8万8000円)を超えると社会保険に加入しなければならず、手取りが減るとの問題も指摘されています。しかし、社会保険に加入することで、妻自身も将来的に厚生年金を受け取れるようになったり、傷病手当金の支給対象となったりするなどメリットもあります。
 

まとめ