しかし、ランタンフライを駆除するための決定的な方法は見つかっていない。数少ない天敵であるカマキリやクモ、鳥などを野に放つことが検討されたが、カマキリは外来種が主体となってしまうため逆に環境に大きな影響を与えてしまう。クモや鳥を放ったとしてもランタンフライの数に追いつかない。
粘着性のハエ取り紙を設置することは一定の効果があるものの、受粉役となるハチなどの他の昆虫まで引っかかってしまう。
ほぼ打つ手なしの中で、米農務省が推奨する対策は「見つけたら足でふみつぶす」ということだけだ。
その農務省の最大の懸念は、ランタンフライがカリフォルニア州まで生息域を拡大させることだ。
カリフォルニア州は世界的なワインの産地であると同時に、米国の食料生産基地でもある。ランタンフライに畑を荒らされたら、経済的損失は壊滅的な規模になり、食料安全保障上の重大な危機に直面する可能性さえある。
ランタンフライは飛行能力が高いわけではなく、生息域の拡大は荷物や車両にくっついてもたらされるという「ヒッチハイク」方式である。移動スピードが速くないため、決定的な駆除方法を見つけるまでの時間稼ぎはできる。
政治的分断を乗り越えて、食料危機回避のために一致団結してランタンフライをふみつけることが今の米国民に課せられた使命である。