ランタンフライの成虫は冬になると死に絶える。その前の9~11月にメスは樹木や家屋、車両など屋外にあるあらゆる場所に卵を産みつける。1匹あたり1~2つの卵塊を産むが、1つの塊には30~60個の卵が含まれている。

 卵を産んだメスは白っぽい液体を分泌し、卵にかける。これが乾燥すると乾いた泥のようになり、周囲から目立たなくして卵を守る働きをする。

 4月ごろから羽化が始まり、幼虫が誕生する。初期の幼虫は黒で白い斑点がある。成長するに従って赤色を帯び、次第に鮮明な赤と黒の体色になる。ここにも白い斑点があり、突然出くわすとギョッとさせられる。幼虫のうちは飛ぶことはできないが、後脚の力が強く、ノミのように遠くまでジャンプする。

 成虫になるのは7月ごろからで、口先が固く、鋭くなる。木の分厚く固い樹皮を貫通させて樹液などを吸うことができるようになる。

 ランタンフライの成虫が食べる植物は70種類を超えるといわれる。樹液を吸った後に、糖分を含んだ粘着性の液体を排せつするため、そこにスズメバチなど他の昆虫が引き寄せられる。

 この排せつされた液体には、時間がたつと黒い微粒子のようなカビが発生する。植物の葉などがこのカビに覆われてしまうと光合成ができず、植物が枯れてしまう。

産業への被害も

 ランタンフライは直接人間に被害を及ぼさないが、大量発生は農業をはじめとした産業の大敵だ。

 ペンシルベニア州立大学の研究グループは、ランタンフライによる州内の経済的損失額は3億2500万ドル(約487億円)にのぼる可能性があると指摘する。

 特にランタンフライの好物であるブドウの被害は大きい。ペンシルベニア州内のブドウ畑ではランタンフライの出現以来、ブドウの収穫量が激減した。ブドウ園の中には90%の木が失われたところもあるという。

 ニューヨーク州は東海岸最大のワインの産地である。ランタンフライによるブドウへの被害を食い止めなければ、地場産業として育成してきたワイン製造に甚大な影響が及ぶ。

駆除方法は…