「年収の壁」には、「税金の壁」と「社会保険の壁」があります。連日、メディアでも取り上げられていますが、もう一度復習してみましょう。
税金の壁「103万円」
年収が103万円を超えると、所得税が発生します。与野党間で話題となっているのが、この「税金の壁」であり、この壁を引き上げようと議論されているところです。
現時点では、会社から支払われる給与が103万円の場合、給与所得控除55万円を差し引くと給与所得が48万円となり、さらに所得控除として基礎控除48万円を差し引くと0円になるため、所得税は課税されないという計算です。
103万円を超えると所得税が発生することに誤りはないのですが、実際には、超えた分に対してのみ課税されるため、負担はそれほど大きくありません。104万円の場合には、超えた1万円に対し5%の税率で計算上500円の所得税が発生します(実際には復興特別所得税が所得税に上乗せされます)。
また、iDeCoの掛金は小規模企業共済等掛金控除に該当しますし、生命保険料も控除の対象となりますので、課税の基礎となる「課税所得金額」が下がることで、年収が103万円を超えていても所得税0円というケースは多くあります。
社会保険の壁「130万円(106万円)」
年収が130万円以上になると、配偶者の扶養から外れ、健康保険・年金保険料などの社会保険料負担が新たに発生します。2016年(平成28年)以降、週20時間以上勤務する短時間労働者の社会保険適用が会社規模により段階的に拡大されてきました。
対象となる働き方として「所定内賃金が月額8万8000円」といった要件があることから「年収106万円の壁」が存在します。2024年10月からは従業員51人以上の会社にも社会保険の適用が拡大されたことから、働き方を意識するケースが増えたと推測されます。
扶養から外れることによる社会保険料の支払いという出費、つまり、給与から差し引かれる社会保険料について負担と感じるケースは多いものの、将来に目を向けると、自分自身が厚生年金の被保険者となることで将来の年金額増額につながります。