このドラマの裏方さんが考える「取材」って、何もかもが単語帳レベルの知識なんですよね。ディテールに思いが及んでない。当事者に寄り添ってない。
ギャルも社会人野球も炊飯器開発も全部そうなんだけど、人の痛みを描く場面でこういうことをやられると、さすがに無責任だし乱暴すぎやしないかと感じる次第です。
第72回、振り返りましょう。
翌日、容体が回復してきた結は……
そういうわけで体よく回復した結さん(橋本環奈)はアユ(仲里依紗)からギャル雑誌を差し入れられ「助かる~、超ヒマやったんよ」とニッコニコ。腎盂腎炎、初めての妊娠、悪阻という、心にも体にも大きな負担のかかる状態だったはずですが、そんな状況でも「ヒマやな~、ギャル雑誌でも読みてえな~」と思っていたようで、強靭な精神力を感じさせます。鉄の女です。これが『おむすび』の考える「ギャル魂」なのでしょう。
その後、やってきた管理栄養士の西条さん(藤原紀香)から何やら小難しい話を聞かされますが、結さんは口半開きでポカーンとしながら視線を彷徨わせます。そんな結さんに、圧の強い顔面で迫る西条紀香。
ここ、たぶん管理栄養士という人の深い知識と洞察、それに明快な語り口に結さんが圧倒され、その職業に憧れを抱くきっかけになるという場面だと思うんですが、この橋本環奈の顔は恐竜を見た人の顔なのよ。
藤原紀香のキャラクター造形と演技プランについてはもう「恐竜」ってことでいいとして、その恐竜に何を食べたいか問われた結さんがこう答えるわけです。
「なら、アイスとか。ソーダ味のアイスキャンディー」
去年ですかね、ガリガリ君ソーダのカップが緩和ケア食に適しているというニュースがありました。この国にガリガリ君を「ソーダ味のアイスキャンディー」と呼ぶ人間はひとりもいません。で、藤原紀香が「アイスは無理やけど凍ったブドウはどうですか?」とブドウを持ってくる。なんでアイスは無理なのかもよくわかりませんが、結さんはブドウを食べて「こんなにブドウがおいしいって感じたの、初めてかも」と感動しています。