重症妊娠悪阻っていうのがあってさ、女の人って妊娠すると食事どころかプリンも食べられないくらい具合が悪くなることがあって、すごく大変なんだよ。でも大丈夫、点滴ブッ込んで1日くらい絶食したら気持ち悪いのもすぐ収まるし、あとは冷凍ブドウでも食わせとけば機嫌も取り戻すよ。数日後にはサワラとかパクパク食べだすってさ。大げさなんだよな、何が重症だよ。単なるつわりだろ? 妊娠出産なんてチョロいもんだよ。子どもなんて、ほっときゃ知らない間に生まれてるんだ。だって天下のNHK朝のテレビ小説『おむすび』で、そう言ってたもん!
……なんて誤解を助長するんです、こういう適当な描き方は。
実際に取材をして、「重症妊娠悪阻」という妊婦さんにすごく負担がかかる症状があることを知って、それをドラマに取り入れようというのは大した志だと思います。単に幸せなだけじゃない、妊婦さんにとって出産は命がけのものであると語ろうとした心意気はいい。それを、単語だけそのまま置くなって話です。完全に逆効果になる。
あんまりちゃんと知っているわけではないですが、「重症妊娠悪阻」って診断されるような症状はこんなに簡単じゃないと思うんですよ。
昨日、Xでは「#重症妊娠悪阻」がトレンドになっていました。そこに並んでいたポストの壮絶さは目を見張るものでした。体重が15kg減ったとか、胃の中に吐くものがなくなって緑色の何かが出てくるとか、そういう話です。
そうした経験談と比したとき、今回『おむすび』が伝えた「重症妊娠悪阻は点滴と1日の絶食で快復する」という情報は明らかな誤りではないのかね。その描写は真摯なものだったのかね。
そういえば重度の右肩関節唇損傷および腱板損傷を負った若者が元気にパラパラを踊って腕を振り回していたこともありました。その翌々日には糸島からたくさんの荷物と土産物をその肩から提げて帰ってきていました。「娘さんをください」の土下座をするとかさせないとかで、プロレスまがいの格闘もしていました。