◆家も親権も財産も持ったまま、夫だけを「排除」したい
そして自身の患者でもある弁護士の神崎に、彼女は離婚する相談をもちかけた。
「絶対に失いたくないもの、ありますか。家、親権、財産……」
陽子は意を決したように言う。
「すべて」
すべて持ったまま、夫だけを「排除」する。それが陽子の望む離婚だ。
それにしても、昂太のクズっぷりはいっそ潔いほど。愛人を手放さず、意図的かどうかはわからないが息子を味方につけつつ、妻には「陽子が大事なんだ。だからこれからはもっと陽子のために時間を作る」と平然と言ってしまえる男は、そうそういない。
昂太の場合、妻に見捨てられると、そのまま仕事も人間関係も喪失する可能性が高い。だからこそ妻に嫌われないことが必須だ。理央の父親が資産家だから、完全に父親を味方にできれば話は変わってくるかもしれないが……。
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