金融商品の税制を考慮して課税が変わる可能性も? 

株式や投資信託などの金融商品が分離課税の対象となり、損益通算や繰越控除ができるようになったのは比較的最近だ。

株の売買益は昭和28年から平成元年までは原則非課税だったし、公社債、公社債投資信託の売買益も非課税だった。配当課税は戦後総合課税のみで、昭和40年に源泉分離課税が選択できるようになってもしばらくは条件がついていた。現在のように債券、投資信託、株式などの利益を分離課税で損益通算及び繰越控除が適用されたのは2016年以降のことだ。

その前からも金融所得課税の一体化が提案され、徐々に実現してきた経緯がある。少子高齢化で貯蓄率が下がり、さらに日本人は株式や投資信託などの投資を敬遠しがちなことから、政府は経済活性化のために家計に対して「貯蓄から投資へ」と呼びかける政策をとるようになった。

そこで、税制でも「金融商品間の課税の中立性」「簡素で分かりやすい税制」「一般の個人の投資リスクの軽減」を目指し、主な金融商品について20%の分離課税と損益通算と繰越控除が適用されるように投資環境が整備されてきたのだ。

上記の主な金融商品のグループには入っていないが、FXについても2012年の4月以降総合課税から分離課税となり、FXやその他の先物取引の損益とも損益通算ができるように税制が変わった。

このように税制は、経済政策やその時々の現状にふさわしいように改正されてきた。仮想通貨についても国がどのような姿勢で臨むのかによって、他の投資商品と同じような変化を迎えることもありえるだろう。

税を徴収する国の戸惑い

それでは、国は仮想通貨をどのように位置付けているのか。2018年現在よりどころになる公的な見解は2017年の改正資金決済法だ。しかし、従来の課税対象とは異なる性質を持つ仮想通貨への国の戸惑いはその前後を通じてうかがうことができる。

金銭か外貨か財産か

仮想通貨は通貨だろうか。法的には通貨とは強制通用力があるものを指す。現状、支払い時に相手が仮想通貨を受け取らなくても問題はなく、法的には通貨ではない。一方、経済学では、価値のあるモノとの交換に使えること、異なるモノの価値の尺度となること、その価値を貯蔵できることの3つの機能を有するものを通貨と考える。仮想通貨は、これらの機能はある程度満たしている。また、本来は支払い手段として生まれ、法的根拠がなくとも支払いに用いることも可能なので部分的ながら通貨の機能も果たしている。

では外貨との類似性はどうだろうか。仮想通貨はどの国の法定通貨でもないので外貨には当てはまらない。ただ、円貨との売買差益が生まれる点は外貨との取引に似ている。

それでは資産だろうか。資産は経済的価値があるものを指す。ただし、税の世界では、現金そのものは値上がりも値下がりもしないので資産とは考えない。外貨そのものも円に換算した価値を測ることができるので円貨に準じて資産にあたらないとされる(ただ、為替の変動で得た差益は「雑所得」として課税される)。後で述べるように完全にモノとして扱うなら、その売買には消費税がかかることとなるが、諸外国でも日本でも消費税はかからないという扱いになった。この点純粋な資産とは扱いが異なるものの、通貨や外貨以外の価値のあるモノなので資産であるとはいえる。

改正資金決済法の前後

仮想通貨とは何か、について一定の回答となるのが2017年の改正資金決済法だ。この法改正そのものは、利用者保護などのために仮想通貨の取扱業者を規制するもので、直接仮想通貨について法的地位を与えるものではない。ただ、この法律で明文化された内容が2018年現在の国の公的な見解だといえる。

この法律の中で仮想通貨は、モノやサービスの購入する際に「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値」であり「本邦通貨及び外国通貨ならびに通貨建資産を除く」とされている。

この前後に、仮想通貨に消費税をかかるかどうかが問題となっていた。2017年7月までは主要国(G7)の中で唯一日本だけが消費税を課していたが、改正資金決済法で仮想通貨が支払い手段と位置付けられたことと、諸外国の課税関係を考慮して消費税が非課税となった。

2017年12月には国税庁が「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」を発表し、2018年現在の雑所得としての課税が定まった。

仮想通貨が誕生したのは2009年にビットコインの最初のブロックが作成されたときといえる。2014年には当時最大級のビットコインの取引所であったマウントゴックス社が破綻した、いわゆる「マウントゴックス事件」が起きたが、それを受け法整備が進められたことで、利用者は2017年前後から大きく増えた(一般社団法人日本仮想通貨交換業協会「仮想通貨取引についての現状報告 平成30年4月10日」)。

改正資金決済法前後で仮想通貨に係る消費税の扱いが変わるなど、急激な変化に国が戸惑っている様子がうかがえる。既存の金銭、外貨、資産との異同を踏まえ、国外の動きをにらみながら税制その他の法整備を図っている段階だ。

現在、仮想通貨は支払い手段というより投資の対象とされることが多い。そのため、他の投資と同じく分離課税にしてほしいと思う人も多いだろう。また、仮想通貨が広まることがブロックチェーンの技術を含めフィンテック(FinTech)の活性化につながる見解からも、税制を含めまだまだ議論は尽きない。国会でも既に取り上げられており、政府も慎重な見解を示しているが、今後も争点となるだろう。