いわゆる「不可逆な問題を起こした夫婦を眺める悪趣味な観察記録」だったのは、ここまで。

 ミワさんが離婚届を出しに行くと言っていた年明けの日。ヒロキはミワさんに電話をかけて「今どこ!?」と叫ぶと、仕事を放り出して駆け出します。そして役所に向かうミワさんを捕獲。“托卵”の罪を自分も背負いたいとミワさんに告げ、元サヤに戻りました。

 ヒロキの計らいで融資を受けられることになった冬月は、再びアフリカで学校を作ることに。一度は絶縁したはずのリサを再び仕事に誘うのでした。リサも「考えとく」とか言いながら、まんざらでもない顔をしています。

 最初にミワさんの托卵に気付き、ヒロキにその事実と自分の横恋慕をまとめてぶちまけた諸悪の根源であるマコトも、雑貨屋のバイトの男の子といい感じに。マコトの息子もバイトには懐いているし、こちらも明るい未来を感じさせる結末でした。

 ヒロキ&ミワ夫婦、冬月、リサ、マコト、その5人をしこたま痛めつけてきたドラマは、まるでこの物語を盛り上げたごほうびのように、あるいは痛めつけてしまったことに対する贖罪のように、5人にささやかな幸せをプレゼントして幕を閉じるのでした。

 うーん、むずむずする! 結局、不幸になったのはヒロキにパワハラしてた上司(安井順平)だけじゃんか!

ジャンルは別として

「托卵をする悪女」をテーマにしたメロドラマというジャンルは別にして、5人の主要登場人物の配置と時制をコントロールしながら感情を振り回していく作劇は見事というほかありませんでした。

 少しずつ事件のタイミングをずらしながら、登場人物たちの選択肢を削っていく。自然と、みんなが最悪な判断をせざるを得ない状況を作り上げていく。そうして、誰彼のドロドロとした本音と打算を引き出していく。誤解と偶然を扱う群像劇として、めちゃくちゃよく練られた脚本だったと思います。プロの仕事とはこういうものだと改めて思い知りました。