出ました。行動で本気度を演出できないから周囲のセリフで「本気です」と評価させる『おむすび』メソッドです。結は別に人助けしてないのに「人助けばかりして自分のことを大切にしない」と評価した専門学校J班メンバー。結が勉強にも彼氏にも全然没頭していないのに「おむすびみたいに、ばり好いとうってこともないし」と評価した陽太(菅生新樹)。セリフによる周囲の評価によって人物を「そうである」と仕立て上げるイカサマ脚本術。こういうの時おりやってくるんだよな。いいね、その調子でがんばれ。

 さて翔也も翔也でシャンプーを水で薄めたり麦茶を水筒に入れてきたりと節約しているようですが、仕事が終わると結を神戸の自宅まで送っていました。

 結は通勤定期代が出ているでしょうけれども、翔也は梅田から神戸まで自腹で電車代を払っています。節約とは?

 節約とは、その帰り道の20キロを走って帰ることでした。元アスリートとはいえ2時間はかかるでしょうね。しかもワイシャツにスラックスに革靴だ。靴はすぐ磨り減っちゃうし、ジョギングシューズじゃないと今度はヒザをやりますよ。あと、毎日そんなかっこうで同じルートを走ってたら職務質問もされるでしょう。梅田に着くころは汗だくだぜ。怪しすぎるよ。

 その走って帰る翔也との別れ際、結は「帰ったら電話ね?」と言いました。

 出た。シャンプーメソッドです。結パパ(北村有起哉)が、風呂場のシャンプーが切れていたのでアユの1本1万円シャンプーを使った。それがバレたらまずいので、安いシャンプーを継ぎ足した。そういう話がありましたね。1話の中で、すぐに矛盾が発生する。

 今回も「電話で話すのはやめた」からの「帰ったら電話ね?」です。

 だから言ったろアユ、「本気っぽいね」じゃないんだよ、こいつが本気だったことなんて一度もないの。

 ここね、差し出がましいこと言いますけど、結に「翔也との電話をやめる」ではなく「翔也との電話は毎日2分までにする」としておけばよかったんです。で、梅田の駅で乗り換える際には、神戸まで送ろうとする翔也がいるわけでしょ。そこで結に「送ってくれるのは、もうおしまい。節約しよ」「その代わり、帰ったら電話するね」とか満面の笑みで言わせればいいんです。そしたら「ああ、この娘はたった2分の電話にもこんなに心を躍らせて、なんていじらしいんでしょう」って思うじゃん。節約にも本気だなって思うじゃん。「たった2分でも声が聞けたらうれしいよね」って、若い恋愛に思いを馳せるじゃん。そういうことだと思うよ。