そして、今回の「翔也が何を言ってるかわからない」問題の極めつけが以下です。
社会人3年目の夏から秋ですよね。翔也は自分に貯金がない理由をこう述べるのです。
「給料のほとんどを野球道具や体のメンテナンスに使ってたから」
まず野球道具から。この人、フリーランスじゃないですよね。必要な道具は会社から支給されているはずだし、もし貯金もできないくらい、年間100万とかを道具につぎ込んでいると考えるなら、それは「首に巻くだけでパワー100倍のパワーストーンネックレス」的なシロモノを騙されて購入しているとしか思えません。
そして、体のメンテナンスについては言わずもがな。肩の痛みを放置して悪化させ、その結果として野球選手の夢を断念した人間が「給料の大半を体のメンテナンスに使っていた」とするなら、「背中に置くだけでパワー100倍のパワーストーンマッサージ」的な詐欺師に引っかかかっていたとしか思えない。
もうね、こういう雑なセリフがいちいち登場人物の魅力を削いでいくわけですよ。翔也という人の野球への取り組み方を雑に描くから、その夢が潰えた現実に重みが出ない。その重みがないから、「姓を変えたい」という話も耳に入ってこない。セリフをひとつしゃべるたびに、登場人物への不信感が増大していく。
そういえば、久しぶりに出てきたJ班との太極軒同窓会のシーンは、なんかすんなり腑に落ちたんですよね。なんとなくだけど、サッチン(山本舞香)、カスミン(平祐奈)、モリモリ(小手伸也)の今の生活というのを想像することができた。
それで思い出したんですが、翔也がギャル化して糸島に帰った結を訪ねてきた陽太(菅生新樹)と恵美ちゃん(中村守里)のカップルも、結&翔也よりずっと自然に、ちゃんとお互い好きで付き合っているように見えたことがありました。
ドラマのフォーカスから外れると、途端に人物たちにクリアなリアリティが現れる。これはあんまり見たことのない逆転現象ですよね。フォーカスの中がどれだけノイズに満ちているかを、改めて感じさせるシーンだったと思います。