つまりは逆算ができてないんですよね。「ギャルにする」「栄養士にする」「ケンカをさせる」という目的が先にあって、そこに至る人の心の動きに裏付けを与えるのが脚本の仕事なわけですけど、そのプロセスでずっと失敗してる。こういう言い方はずっと控えてきたけど、これはもう性癖にかかわる部分だったのでストレートに言っちゃうけど、要するにヘタクソなんだよ。

 2人が言い合いをしているシーンで、アユ(仲里依紗)の脳内描写として「2人が特攻服とセーラー服を着ているように見えてきた」と表現するシーンがありました。アユの耳には、パラリラパラリラというホーンの音や、バイクのエンジン音が聞こえている。

 2人がケンカをしている理由が「元レディースと元スケバンだから」という属性の問題に矮小化されているということです。こっちは感情の衝突が見たいのです。感情の表現が見たいのです。属性には感情が宿らないのです。

「だったら会社か寮に来ればいいべよ」
「私は昔からひとりでカチコミするタイプなんだよ」

 まさしく翔也ママは、そういうタイプである、元レディースという属性であるという理由でヨネダに来たと言い切っています。

「翔也ママはなんで怒り狂って乗り込んできたの? 元レディースだから」というのは、「なんでエッチなことしてるの? AVだから」というのと同じです。それでは興奮できないよねという話です。

翔也の言ってることもよくわからない

 この悶着を起こすきっかけとなったのが、翔也の「ムコ」宣言です。四ツ木姓を捨て、米田姓を名乗りたい。別の人間になりたいという考えはもうないけど、米田として新しい人生を生きたい。

 ちょっと何言ってるかわかりません。

 というか、この2人が「四ツ木」になるか「米田」になるかなんて今まで視聴者は一度も気にしたことがないし、マジでどっちでもいいんですよ。少なくとも妻になる結と四ツ木家との顔合わせすら済んでいない現状で話題にするようなことではない。このシーンをもって夫婦別姓問題に切り込んでいると思っているのならとんだ不見識ですし、単に翔也ママにカチコミをさせる理由がほかに思い浮かばなかったのだとしたら、やっぱり浅はかだよなと言わざるを得ません。