さらに、ナベさんが震災の直前に妻を亡くしているという設定も話をややこしくしています。
後に統括さんの取材記事で明らかになるのですが、ナベさんはもともとナベべ的な、明るく楽しい人だったのだそうです。それが、妻を失って酒浸りになり、偏屈になってしまったという。だとすれば、震災前に闇雲にアーケードに反対していたナベさんに対する周囲の態度に説明がつかなくなるんです。
「偏屈なナベにも丁寧に接する優しい結パパ(北村有起哉)」というシーンを撮りたいがために、ナベを単なる厄介者としてしか描けなかった。周囲がナベに理解を示してしまうと、結パパがアーケード設置を取りまとめるヒーローとして描けなくなるからです。そういう作劇の都合が、「被災者を描く」という作品の大テーマよりも優先されている。ここも、震災に対する作り手側の誠意の欠如と感じさせる部分でした。取材対象に対する誠意なんて別に欠如しててもいいと思うけど、それがバレたらプロ失格だよなと、そういう話です。
ナベの「ナベべ化」の是非についてはねえ、感じ方は人それぞれだと思いますけど、個人的にはとりあえず明るくなって楽しそうだったので、よかったと思います。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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