そこらの若手なら裸足で逃げ出したくなってしまうところだろうが、そこは百戦錬磨の友近である。会話中に唐突に徹子が差し込んでくる「キャサリン」のリクエストも難なくこなし、「朝ドラの主人公」「昭和のCM」「ダンスの先生」といったオリジナルモノマネで徹子から「ぐふふふふぅ」という低音の笑い声を引き出していた。

「いいですね、この環境でやるのって斬新で、やっぱりいいですね」

 芸歴20年を超え、もう試されることもなくなった友近にとって、『徹子の部屋』はこれ以上ない刺激を与えてくれる舞台だったのかもしれない。

ネタを飛ばしたのは初めて オズワルド編(2024年8月10日)

 一方で、その地獄に完全に取り込まれてしまったのがオズワルドだった。『M-1グランプリ』(同)で2019年~22年に4年連続ファイナル進出。年間1,000ステージに立つ筋金入りの漫才師である。

 しかし、そんなことはまったく知らない徹子。「独特のスローテンポな漫才が人気だそうですけど」と伝聞情報をもとに、ぼんやりとした質問を投げてくる。

「僕らよりたぶん、独特なスローテンポだと思います、徹子さんは」

 伊藤俊介の返しはいわゆる“正解”だったに違いないが、その声は徹子には届かずスタジオの霧と消えた。

 すっかり意気消沈した伊藤。隣では、畠中悠が徹子と普通の話をしている。延々と普通の話を笑いゼロで続けられるのが、畠中という芸人の特異な才能である。

 そしていよいよ、ネタ披露の時間になる。年間1,000ステージ、彼らの前には熱心なお笑いマニアが座っていたこともあるし、観光客や家族連れといったライト層に埋め尽くされていたこともあるだろう。ネタのチョイスにも抜かりはなかったはずだ。

 だが、その「ダイエット」をテーマにした漫才を、オズワルドは失敗する。

「今85キロくらいあるのかな」
「もともとはどれくらいあったの?」
「3,200グラム」
「だいぶ太ったね」