振り返りましょう。
そのレシピは美味いの? 美味くないの?
イケメン調理師の原口(萩原利久)と意気投合した結さん。コック長の立川さんが休んだときのために、社食のレシピを明文化することにしました。しかし、そのレシピは立川さんの頭の中にしかないそうで、原口と結託して立川さんの調理を盗み見し、メモを取ることにしたようです。
原口を夜通し酒席に付き合わせるという前時代的なパワハラを行い、機嫌を直した立川さんは厨房で包丁を研いでいます。
「俺はここの責任者やぞ、朝一番に来て最後に帰るんは当然やろ」
結さんの後に来たのに、そんなことを言う立川さん。というか、結さんは何時に来たんでしょう? なんでそんな早く来たの? ここも必要な説明が省かれています。
そして立川さんが仕込みを始めると、結さんはずっとメモを取っています。あんなにてんやわんやだったはずのランチ前の厨房が、なぜだか今日はすっかり静まり返っています。誰にも邪魔されず、ほかの作業をしているはずのパートさんたちを手伝うこともなく、レシピを書き写す結さん。いったん視聴者に提示された「職場の風景」というものが、たった1日で一変してしまっている。こういうことをやってしまうと、もうこのドラマは「主人公が慣れない職場に慣れていく」というプロセスを描くことはできません。
そしてそもそも、立川さんのレシピをコピーしたいという結さんのモチベーションもよくわかりません。そのレシピは量ばかり多くて味が濃くて、野球部にとっても女性社員にとっても不適切であるという判断をしていたはずです。だからこそ「メニューを一新したい」と進言したにもかかわらず、今度はそれをコピーすることに執心している。
物語を素直に追いかけていれば、このタイミングで結さんがやるべきことは旧態依然としたレシピのコピーではなく、新メニューの考案であるはずです。
「先日は生意気なことを言いましたが、具体的な新メニューを考えてきました。見てください」