◆危険な場所やシチュエーションは、子どもに具体的に教えていく
――同調圧力は、子どもにとって避けるのが難しい問題ですね。
大塚「子どもの場合、集団でいるときに大きな事故が起こることが多いですね。個人ではそこまで危険なことはしませんが、集団になると悪さをしてしまいます。集団の圧力で、気づいたら結構危ないグループに関わって、危ない遊びをしてしまっているんですね。
かわいそうなのは、子どもも危ないことはなんとなくわかっていることです。おうちの人から危ない場所だという話も聞いています。でも、なにが危ないか、どうしたらいいのかが具体的にわからないから、いざ危機に遭遇しても危険を回避できないんです。
だから、危険な場所やシチュエーションは、子どもに具体的に教えていくことが大事です。その上で、逃げ方を自分で考えられるようにしておく。最低限、ここには近づかない、もしもの時の逃げ場所を確認しておくといいと思います。事前に回避方法を教えておくことも大切です。また、危険なグループや同調圧力を感じたら逃げなさい、という話もできるといいですよね」
◆だれかが溺れてしまったら、本当に「何もできない」
――川や海での危険を子どもが事前に察知するのは、なかなか難しいですね。
大塚「子どもが数人集まって、みんなでテンションが上がっていると、ますます難しくなりますよね。だれかが沈水して初めて気づくことになると思います。そして、だれかが溺れてしまったときは、作品の中でも『何もできない』と描いていますが、実際にどうしようもないんです。無理なものは無理。そこにいる人たちは助けられません。だからこそ、事前に沈水の怖さを知って、沈水の危険がある場所には近づかないようにしてほしいと漫画では警告しています。
昔の人は『河童がいるから、近づいちゃダメだよ』と子どもに恐怖を植え付け、危険な場所に近づけないようにしていました。危険を回避させるための苦肉の策ですね。『危険な川に行こう』となっても、そこにいる誰かが『あの池は河童が出るからダメだよ』『牛も引きずり込むくらい、怖いらしい』と言って抑止力になります。そこで、危険な川には近づかなくなるんです。