◆「絶対」ではなく「可能性」を提案するアプローチ

 そんな2人の関係性と距離感は、山添くんの以下の言葉を発端として、しだいに「正解」を見つけていったように思えた。

「自分の発作はどうにもならないですけど、3回に1回くらいだったら、藤沢さんのこと助けられると思うんですよ」

 相手のことを絶対に救えるわけじゃないし、自分のことだってどうにもならないかもしれない。それでも、助けられることはあるかもしれない。現実でも、苦しんでいる身近な誰かに、そのような「可能性」を提案できるのではと、心から思えたのだ。

 そして、2人はいつしか「じゃあ、また明日」「うん、また明日」と言って別れたりもする。なんてことはない、あっさりとした、ごく普通のやり取りおよび距離感になったと思えるからこそ、理想的に見えるし、ずっと見ていたくなるほどだった。