そしてフローライトの採掘権を守り抜いたテントは、乃木のメッセージを受け取っていた公安の捜査員・野崎守(阿部寛)が協力した交換条件として、ベキと幹部のバトラカ(林泰文)、ピヨ(吉原光夫)を日本の公安に引き渡し、テントを解体することに応じる。フローライト事業は「息子」ノコル(二宮和也)に引き継がれ、バルカの未来はノコルに託された。乃木とベキの父子の和解、テロ組織の解体、バルカの孤児救済……すべてが解決したかと思われたが、4日後、日本に到着したベキたちが逃亡。前話で謎に包まれていた「日本のモニター(協力者)」は、野崎の部下である公安の新庄浩太郎(竜星涼)であり、新庄の手引きでベキたちは内閣官房副長官・上原史郎(橋爪功)の自宅に向かう。上原は元公安外事課課長であり、40年前、公安警察だったベキ=乃木卓がバルカ潜入任務で危機に陥った際に己の保身のために見捨てた張本人だった。「テントの最終標的は日本」というのは、ベキの個人的な“復讐”だったのだ。しかし、そこに乃木が駆けつける。「息子に命を奪われるなら、本望だ」というベキは、乃木の銃撃を受けて倒れる。

 日本の重要人物である上原を守るという「任務」に忠実に行動した乃木が、すべての元凶である上原への復讐を果たそうとする父親を撃つ。40年ぶりに再会した父子の結末は悲しいものとなってしまったかに思われたが、本当にこれで終わりなのか、と思わせる最終話でもあった。乃木がノコルに電話でベキの顛末を報告した際、乃木は燃える上原邸を後に、「“皇天親無く惟徳を是輔く”。……花を手向けるのは、まだ先にするよ」と言って、微笑を浮かべた。皇天親無く惟徳を是輔くとは「天は公平で贔屓せず、徳のある人を助ける」という意味の漢語であり、つまり孤児救済に励んでいたベキたちが生きていると考えられるセリフだ。乃木がテントに潜入するために別班のメンバーを銃撃した際も、「神業」でわずかに急所を外してみせたことから、ベキらにも同じことをしたのではないだろうか。タイトルの『VIVANT』が指すものが、別班だけでなく、フランス語の「生きている」というそのままの意味――ベキは生きているという意味だったのではとの考察もある。

 ラストシーンからも新たな「冒険」を思わせる。乃木の自宅近くの神田明神で医師で恋人の柚木薫(二階堂ふみ)との再会を喜ぶその脇の祠には、別班の連絡手段である赤い饅頭が。乃木の別人格・Fが「おいおいおい、いいところ悪いけどよ、憂助。そろそろ見た方がいいんじゃないの?」と、饅頭を見るよう語りかける。テント潜入後は登場の場が少なく、少し寂しい印象だったFの存在感。Fの活躍を見たいがためにも、次回作への期待が高まる。

 だが、結局Fがなぜ「F」なのかは明かされないまま。他にも、回収されていない伏線はいくつかある。ジャミーン(Nandin-Erdene Khongorzul)が「奇跡の少女」であることは別班司令の櫻井里美(キムラ緑子)も言及していたことだったが、この「奇跡の少女」が何を指す言葉だったのかは結局明かされることはなかった。