◆前受金のビジネスモデルでひずみが
東京商工リサーチによると「脱毛サロンなどエステティック業」の倒産件数は、2024年1~11月で99件。前年の88件を上回っています。
アリシアクリニックに類似した事例として、2023年12月15日には脱毛サロン「銀座カラー」を運営していた株式会社エム・シーネットワークスジャパンが、負債総額58億円、債権者約10万人で東京地裁の破産開始決定を受けるなど、その過程では六條さんも“脱毛バブル崩壊”を予感していたといいます。
「アリシアクリニックについては、2019年12月に無制限の“通い放題”プランを廃止した時点で危ないとは思っていました。その後、2023年内に湘南美容クリニックが料金を大幅値下げしたことで医療脱毛業界の潮目が変わり、低価格化が加速したんです。アリシアクリニックは、前受金(後述)と過去の無制限プランの負担の構造が、倒産した銀座カラーと似ていました。
そこに加えて、医療脱毛業界の一角として低価格化へとシフトせざるをえなかったのが、破産のきっかけになったとみています。そして、2024年7月にアリシアクリニックが姉妹店の『じぶんクリニック』を統合した時点では、すでに時間の問題で、新規契約が入りやすい夏にお金を集めてから、倒産へ向かうのだろうと見込んでいました」
一部の専門家は、客が前払いしていた施術代金“前受金”を頼りにするずさんな経営方針が、破産の大きな要因となったと指摘。前受金による経営は、脱毛業界では一般的といいます。
「前受金でのビジネスモデルには、短期間で大きな資金を集められるメリットがあります。ただ、あくまでもお客さんからの預かり金で、いわば“借金”であると自覚しない脱毛サロンも少なくありません。一般的に、脱毛サロンでの契約時は数回分~十数回分を先払いするケースが多いです。サロン側はそれを新規店舗の開拓費用や広告費にあてて、規模拡大を図ります。