「お金持ちだから絶対に金銭的な失敗はしない」というわけではない。むしろ、過去の大きな過ちから重要なレッスンを学び、それを糧に大成功を収めたお金持ちも多い。
ウォーレン・バフェット氏、ジェフ・ベゾス氏、ビル・ゲイツ氏など、10億ドル以上の投資可能資産を所有するビリオネア5人の「人生最大の失敗」を見てみよう。
ウォーレン・バフェット−−バークシャー・ハサウェイの買収
バフェット氏にとって最大の金銭的失敗は「バークシャー・ハサウェイを買収したこと」というから驚きだ。
同氏は2010年、CNBCのテレビ番組「Squawk Box」に出演した際、「バークシャー・ハサウェイではなく優良な保険会社に投資していれば、今の2倍の価値に成長していた」と語った。
1962年、当時綿紡績事業を営んでいた バークシャー・ハサウェイは、第二次世界大戦後の毛織物産業の衰退を受け、破たん寸前だった。バフェット氏は格安株を買って売り戻しを繰り返すという投資戦略から、ちょっとした利益を得る意図で同社の株を買い始めたが、やがて十分な株を取得して企業支配権を持つようになった。
しかし綿紡績会社としてのバークシャー・ハサウェイには、バフェット氏いわく「あまり利益にならない綿紡績関連の資産」がついてきた。この資産が原因で20年という歳月を費やすことになる。
「綿紡績事業への投資を続ける代わりに保険会社を設立していれば、時価総額があと2億ドルは成長していただろう」と、世界中がうらやむほどの大成功を収めた現在も悔やむバフェット氏は、真の野心家である(CNBC2018年10月18日付記事)。
ジェフ・ベゾス−−Fire Phoneで1.7億ドルの損失
Amazonの国際的大成功で世界一のお金持ちになったベゾス氏だが、2014年、ニューヨークで開催されたビジネスインサイダーのカンファレンスに出席した際、Amazonで何十億ドルも損失をだしたことを認めている。同社に1.7億ドルの損失をまねいた、3D対応のスマートフォン「Fire Phone」が、その代表例だ。
しかしポジティブ思考なベゾス氏は、「こうした失敗はとるに足らないことで、実際に問題となるのは挑戦し続けない企業だ」 と、チャレンジ精神のない企業がいずれ頭打ちする危険性を警告している(ガーディアン2014年12月3日付記事)。
ジョージ・ソロス−−「債券王」への5億ドル
「イングランド銀行をつぶした男」の異名をもつソロス氏にとっての近年の大失敗は、「債券王」ビル・グロース氏への5億ドルの投資だろう。
グロース氏が世界屈指の資産運用会社PIMCOからジャナス・キャピタルに移籍した2014年、ソロス氏は自身のソロス・ファンド・マネジメントを通して5億ドルを運用を任せるが、1年もたたないうちに資金を引き上げた。
ソロス氏は予想を下回るパフォーマンスに懸念を感じ、早い段階にグロース氏に見切りをつけた。利益につながらない投資という点では判断ミスではあったものの、早期引上げの判断は正しかったようだ。グロース氏のパフォーマンス低迷は資金引上げ後も続き、ほかの投資家も総額1億ドル以上を引き上げたそうだ (ビジネスインサイダー2017年12月7日付記事)。